この秋、訪れたい美術館。「Connections─海を越える憧れ、日本とフランスの150年」を開催するポーラ美術館

箱根にあるポーラ美術館で、異国への憧憬と芸術家の想像力を感じられる展覧会「Connections─海を越える憧れ、日本とフランスの150年」が開催される。会期は2020年11月14日〜2021年4月4日。

文=永峰美佳

森村泰昌 肖像(ゴッホ) 1985 カラー写真 120×100cm 高松市美術館蔵

 異文化へのアーティストの眼差しから、幻想やズレをとらえつつ、日本とフランスのつながりの本質へ迫ろうとする画期的な展覧会が開かれる。

 19世紀後半から20世紀初頭にかけて、日本の浮世絵や工芸品は、モネやゴッホなどの芸術家たちにインスピレーションを与えた。同じ頃、開国を機に欧化政策を進める日本では、多くの画学生がフランスへ留学し、また大正期には、雑誌や画集を通してフランスへの情熱を募らせる若者が大勢いた。このように新しい時代の美を模索するうえで、お互いに不可欠な存在であった日本とフランス。本展は2つの国の芸術が織りなす「美の往還」を浮き彫りにして検証する試みだ。

荒木悠 戯訳「江戸」 2019 ヴィデオ 18分37秒 作家蔵 Courtesy of the
artist and MUJIN-TO Production; Produced by Shiseido Co., Ltd.

 展示のプロローグは現代作家の荒木悠の映像作品からスタートし、印象派をはじめとする近代絵画群に、森村泰昌、山口晃、ドミニク・ゴンザレス=フォルステルといった現代の作品が大胆に溶け込むユニークな構成にも注目したい。

 歌川広重 名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池 1856 木版画 32.0 x 21.0cm 東京藝術大学蔵 展示期間:2021年3月7日〜4月4日
山口晃 新東都名所 「芝の大塔」(制作:アダチ版画研究所) 2014 木版画 39.2 x 26.9cm ミヅマアートギャラリー (c)YAMAGUCHI Akira, Courtesy of Mizuma Art Gallery

 さらに本展は、歴史的発見にも恵まれた。黒田清輝の作品《野辺》は、1900年のパリ万博で黒田が見た師ラファエル・コランの《眠り》に大きなヒントを得たとされているが、コランの同作は長らく所在不明だった。ところが近年、パリのある財団内で発見されたのである。120年の時を経て、世界で初めて2つの作品が並んで展示される。

ラファエル・コラン 眠り 1892 キャンバスに油彩 65.6×93.0cm 芸術家財団(パリ)蔵
© Fondation des Artistes/Raphaële Kriegel
黒田清輝 野辺 1907 キャンバスに油彩 54.9×72.8cm ポーラ美術館蔵

 実際に作品を見比べてみよう。何に憧れ、何を表現しようとしたのか。アーティストの想像力の発露に触れる、またとない機会になりそうだ。

 担当学芸員の山塙菜未は、同展のみどころを次のように語る。「私たちが異国や異文化と出会うとき、驚きや感動とともに、抱いていたイメージとの違いに戸惑うことがあります。本展では関連作品を並べて展示することで、アーティストたちの『美の往還』を直接体感することを目指しました。ギャップはギャップのままユーモアを持って受け止め、その意味を考えてみる。いつの時代もイマジネーションを発揮して、お互いを発見し続けることの大切さを痛感します。世界が共通する課題と向き合ういまだからこそ、異文化交流の意義と魅力を感じていただければと思います」。

クロード・モネ ヴァランジュヴィルの風景 1882 キャンバスに油彩 64.9×81.0cm ポーラ美術館蔵
ポール・セザンヌ 砂糖壺、梨とテーブルクロス 1893〜1894 カンヴァスに油彩 50.9×62.0cm ポーラ美術館蔵 展示期間:2020年12月中旬~
安井曾太郎 ターブルの上 1912 キャンバスに油彩 46.2×55.1cm 福島県立美術館蔵

編集部

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