ダミアン・ハーストが3億円分の作品を燃やした理由

イギリスでもっとも物議をかもすアーティストのひとりである、ダミアン・ハースト。彼の新しいプロジェクトでは、自身の大量の作品を焼却することで、美術作品の「価値の移行」を見せつけた。

文=加藤真由

ライブパフォーマンスの様子 © Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2022

 フリーズ・ロンドン開催前日の10月11日、ロンドンにあるダミアン・ハーストのギャラリーから煙が立ち上がった。1000点におよぶハーストの代表作シリーズ「スポット・ペインティング」が消え去ったのだ。1作品あたりの売値は2000ドル(約29万円)で、単純計算しても200万ドル(約2億9000万円)相当のアートが数時間で灰となったことになる。

 イギリスのメディア各紙が取り上げたこの出来事は、事故というわけではなく、ハーストが自ら企画したイベントだ。彼が2015年から取り組んでいる「The Currency(=通貨)」プロジェクトの一環で、物質的なアートワークか、デジタルの作品か、どちらの方が価値が高いのかを実験的に問う。

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