草間彌生の生涯の友人であり、2019年に逝去した医師・廣瀬輝夫。その草間彌生コレクションから、これまで一度も公開されたことのない作品がオークションハウス「ボナムズ」で競売にかけられる。
草間と廣瀬はともに1950年代に日本から渡米。60年代、草間は治療のために廣瀬を訪ね、安価もしくは無料で治療を受けていた。その感謝の意を示すため、自身の作品を廣瀬に贈ったという。
今回の出品作は、草間が50年代後半から60年にかけてつくった絵画3点とドローイング8点。そのうち、草間が代表的なモチーフ「無限の網」を用いて「川」をテーマにした《Mississippi River》と《Hudson River》(いずれも1960)は、それぞれ推定300万ドル〜500万ドル(約3億3000万円〜5億4000万円)で出品。鮮やかな色を組み合わせた初期作品《Untitled》(1965)は、250万ドル〜350万ドル(約2億7000万円〜3億8000万円)の予想落札価格で出品される。
また8点のドローイングは草間が57年に渡米する前に制作したもので、その後の草間の作品において基礎となったものだとされており、「無限の網」の起源が示されているほか、いまや草間の代表的なモチーフである水玉や花なども含まれている。
ボナムズの戦後・現代美術部門のグローバルヘッド、ラルフ・テイラーは今回のセールについて、次のようにコメントしている。「今回のコレクションは、草間彌生の稀有な初期作品を集めた逸品だ。これらの作品は驚くべき出自を持つだけでなく、草間の作品のなかでも非常に重要な意味を持ち、草間がキャリアを通して探求し、発展させていく多くの初期の特徴やテーマを表現している」。
なお、一部の出品作は4月7日〜22日にボナムズ・香港で、全作品は4月30日〜5月12日にニューヨークで展示。競売は、5月12日にボナムズ・ニューヨークで開催される戦後・現代美術セールの直前に行われる。