大林財団は、アートコレクターとしても知られる大林組会長・大林剛郞が理事長を務める財団で、1998年に設立された「財団法人大林都市研究振興財団」を前身とし、2011年から現在の名称で「都市のあり方」を中心に研究活動を展開してきた。
「都市のヴィジョン−Obayashi Foundation Research Program」と題した、新しい助成プログラムは、2年に1度の間隔で、自由な発想を持ち、都市のあり方に強い興味を持つ国内外のアーティストを5人の推薦選考委員の推薦に基づいて決定。建築系の都市計画とは異なる視点から、都市におけるさまざまな問題を研究・考察し、住んでみたい都市や、理想の都市のあり方を提案・提言してもらうというもの。
推薦選考委員は住友文彦(委員長/アーツ前橋館長/東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科准教授)、飯田志保子(副委員長/インディペンデント・キュレーター/東京藝術大学美術学部先端芸術表現科・大学院美術研究科グローバルアートプラクティス専攻准教授)、野村しのぶ(東京オペラシティアートギャラリーキュレーター)、保坂健二朗(東京国立近代美術館主任研究員)、藪前知子(東京都現代美術館学芸員)が務めている。
第1回目の助成対象者となったのは、美少女やエロティック、グロテスク、戦争、暴力、政治などを扱い、現代日本社会を批評する作品を生み出してきた会田誠。選考過程では、「ラディカルさにおいて会田誠を選ぶ点については全員一致」だったという。会田はこの助成を受け、東京・表参道の特設会場で個展「GROUND NO PLAN」展(2018年2月10日〜24日)を開催。会田が考える未来の「都市」「国土」をドローイング、完成予想図、建築模型、絵画、インスタレーション、映像、テキストなど、多様なメディアを用いて表現する予定だという。
この助成を受けての個展に関して、会田は「今回の展示は、僕のそのようなタイプの仕事を、新しいアイデアも加えつつ集大成的に提出する機会となるでしょう」としながら、「『フリーダムな態度で散らかり放題に出したアイデアたち』という印象になるでしょう」とコメント。展示の中心は、プランの完成予想図や立体模型になるというが、なんらかの「自問自答的テキスト」の掲示も多くなるという。「日本や東京の現状、そして未来に対しては、暗澹たる気持ちを抱かざるをえないところが正直あります。しかしそれをそのまま反映させて、暗い雰囲気の展示にはしたくないものです」と語る会田。かつて《新宿御苑大改造計画》(2001)などで「都市」にコミットしてきた会田は、ここでどのような展開を見せるだろうか。