2016年10月に急逝したポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダ。ワルシャワ蜂起などの史実に材をとった作品を撮り続け、1981年には『鉄の男』でカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞、2000年には米アカデミー賞名誉賞を受賞した。
本作は、第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦の支配下におかれたポーランドで、社会主義政権による圧制と闘い続けた実在の前衛画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキの生涯を描くもの。ストゥシェミンスキは、カンディンスキーやシャガールなどとも交流を持ち、創作と美術教育に打ち込んだが、芸術を政治に利用しようとする政府に反発したため迫害を受け、芸術家としての名声も尊厳も失っていく。
自身も対独レジスタンス運動に参加した経験を持ち、激動の時代に自らの信念を貫いた人々の物語を撮り続けたワイダ。全体主義に対するレジスタンスのシンボルとなった画家の姿を描いた本作は、まさしく「遺言」と呼べる作品となっている。