パスカル・ロジェはフランスを代表するピアニスト。17歳でイギリスのデッカ・レコードの専属アーティストとなり、以来数多くの録音を行うほか、世界各国でリサイタルを開催している。優雅で繊細なフレージングで知られ、特にラヴェルの演奏では高い評価を受ける。
いっぽう現代美術家・束芋(たばいも)は、《にっぽんの台所》(1999)でデビュー以来、浮世絵を思わせる色彩やタッチで、日本社会や内面世界を象徴的に描いたアニメーション作品を発表。近年は、杉本博司脚本・演出の人形浄瑠璃『曾根崎心中』や、自ら構成・演出を手がけた映像芝居『錆からでた実』など、舞台作品にも多数参加している。
今回のコラボレーションは、2012年の初演以来5年ぶりの再演。ロジェが演奏するドビュッシー、ラヴェル、サティらの美しくも不気味さをたたえる楽曲に合わせ、束芋のアニメーション作品がホール内の大スクリーンに投影される。
本公演では、束芋がドビュッシーの前奏曲集第1集「沈める寺」のために制作した新作も公開。海に沈んだ大聖堂が水中から浮かび上がるという伝説にインスピレーションを受けて作曲された楽曲が、映像と共鳴し幻想的で荘厳な世界を演出する。