2016.9.8

山本現代など4ギャラリーが天王洲へ 新たなアートの発信地誕生

東京・白金にある児玉画廊、山本現代、URANO(ARATANIURANOから名称変更)と、東雲のユカ・ツルノ・ギャラリーが9月10日、天王洲の「TERRADA Art Complex」に移転、新スペースをオープンする。天王洲は昨今アート事業に力を入れている寺田倉庫が本拠地としている地域。東京のアートシーンで新たな起爆剤となる「TERRADA Art Complex」構想、その狙いとは。

TERRADA Art Complex(中央)を対岸から臨む
前へ
次へ

 4つのギャラリーが移転する先は寺田倉庫が昨年、アーティストのための賃貸アトリエとして開設した「T-Art KÔBÔ」と、シンガポールのヘルトランス社と設立した美術品の輸送などを手がける「Helutrans-Terrada」が入る建物の3階部分。元倉庫の特性を生かしたスペースは1フロア約230坪(約760平方メートル)、天井高は約5mにおよび、大型エレベーターでフロアを行き来する様子は、かつて清澄白河に存在していた「清澄アートコンプレックス」(小山登美夫ギャラリーやタカ•イシイ・ギャラリーなど多数の現代美術ギャラリーが入居していた。2015年に閉鎖)をほうふつとさせる。

 この移転計画が持ち上がったのは約2年前。寺田倉庫のアート事業担当である是川泰之氏によると「もともとお客様であった山本現代が新たなスペースを探していました。また私としてもギャラリーを(天王洲に)誘致したいという考えがあった」という。またユカ・ツルノ・ギャラリーも東雲からの移転を以前から検討していたことに加え、児玉画廊とURANOは山本現代が間に入るかたちで、今回の4ギャラリー同時オープンとなった。

 是川氏は今回の移転についてこう語る。「シンガポールや香港にはギャラリーが集まっている場所がある。(寺田倉庫は)海外からの顧客も増えており、『東京ではどこにアートを見に行けばいいか』と聞かれることもありますが、1か所にまとまっているところがほとんどない。そういう場所のひとつになれればと思っています」。

「TERRADA Art Complex」外観。3階に4ギャラリーが入る

 こけら落としとなる展覧会は次のとおり。山本現代ではナイル・ケティング、小林耕平、今津景、宇治野宗輝等が参加する「Welcome to the A W E S O M E M A N S I O N」が、児玉画廊ではシリーズ展「ignore your perspective」 の第35弾「外見の違うハードコア」で貴志真生也、関口正浩、和田真由子の3作家が展示される。URANOでは淺井裕介の個展が開催されるほか、ユカ・ツルノ・ギャラリーでは、NYを拠点とするアーティスト、ホセ・パルラの個展「Small Golden Suns」を開催。

 すでに「T-Art Gallery」や「建築倉庫ミュージアム」、画材ラボ「PIGMENT」、ストリートアートが溢れる「BOND Street」などが集積している天王洲地域。寺田倉庫によると、今後もギャラリーの新規誘致は継続的に行っていくとのこと。同地が東京の新たなアートシーンを担う場所になることは間違いないだろう。