1990年代より音楽やサブカルチャーに影響を受けた大量のドローイング作品で注目を集め、その後はグラデーションを特徴とするモノクロのペインティングやミニマルで造形的なカラー作品を発表するなど、高い評価を得ている画家・五木田智央。9月7日発売の『美術手帖』10月号は、あらゆる角度から五木田智央を深掘りする特集だ。
五木田の絵画制作の原点は、日本の美術教育ではなく、自ら浴びるように享受した1970年代〜90年代のミックスカルチャーにある。ハイアートの外側を走り続け、気がつけば日本を代表する画家のひとりとなっていた彼は、これまで何を考え、どのように絵を描き続けてきたのか。この特集では、「もっとヘタになりたい」と語る、五木田の絵画はもちろんのこと、それらを生み出す文化的コンテクストにも焦点を当て、彼の絵画構築の方法や創作の原点に迫る。
巻頭インタビューでは、絵における「ヘタうま」の魅力から、自らが画面のなかに生み出す「形」について、そして子供の絵から受ける衝撃の話まで、「ヘタ」を愛し制作の自由を求める五木田にとっての絵画論を展開。絵の説明を避けてきた五木田の絵画を、できる限り解説する記事「『コンセプト』なき絵画制作の方法論」では、ネタ元となるスクラップ・ブック、人物を描く理由、形を生み出す方法論やシンプルな技法など様々な角度から、五木田の絵画制作の方法に迫るものだ。
本特集でさらに注目したいのは、五木田を取り巻く周辺の人々による言葉。先輩であり恩人でもある画家・角田純との対談や、五木田と関わりのある音楽家のジム・オルークやテイ・トウワ、精神分析医で多くの作家論を執筆するジェイミーソン・ウェブスターへのインタビュー、TOGAの古田泰子ら旧知の仲の6名が集まったアトリエでの飲み会レポートなどが収録。さらに佐々木敦らによる五木田の作家像を深堀りする2本の論考なども掲載されており、現時点における五木田智央大全とも言える内容となっている。
第二特集は、ルアンルパが芸術監督を務める「ドクメンタ15」にフォーカス。「反ユダヤ主義」とされる作品が問題となり大きな注目を集めるドクメンタ15の様子を、ベルリン在住の美術ジャーナリストが現地レポートでお届けする。