美術業界は変わることができるのか? 美術評論家連盟が「ハラスメント防止のためのガイドライン」を制定

今年、四方幸子が新会長に就任した美術評論家連盟が、「ハラスメント防止のためのガイドライン」を制定・発表した。

美術評論家連盟ウェブサイトより

 今年1月にインディペンデント・キュレーターで批評家の四方幸子が新会長に就任した美術評論家連盟が、「ハラスメント防止のためのガイドライン」を制定・発表した。

 ガイドラインは、「本連盟会員とそれに関係する人々の人権を守り、各人が評論活動や職務を行うための自由で安全な環境づくり」と、そのための「さまざまなハラスメントの発生の防止」が目的とされている。

 連盟では、ガイドライン制定とともにハラスメント対策として苦情を申し立てて相談できる「相談員」を4名配置。「具体的な対策をできうるかぎり公正中立な立場で調査、判断、審議し、ハラスメント及び被害の拡大や防止への措置」を講じるという。

 ハラスメントの事例には、「展覧会や懇親会などに無理矢理誘う」「評論家やキュレーターの立場を利用して、性的関係を迫ったり、金銭的に不利な条件を承知させたりする」など、美術業界特有の具体例が記載されている。

 美術評論家連盟においては昨年、前会長が元教え子の女性からセクシャルハラスメントで提訴され会長職を辞任、連盟を退会するという経緯があった。また美術業界全体に目を移すと、「表現の現場調査団」が行った調査では、回答者1449名のうち「なんらかのハラスメントを受けた経験がある」と回答したのは1195名に上っており、美術手帖がキュレーターを対象に行なった労務環境アンケートでは、回答者の6割以上がパワハラ経験があると答えている。

 四方会長は今回のガイドラインについて、「美術手帖」に対して次のようなコメントを寄せた。業界が変わる契機になることが期待される。

 「『批評』とは、美術だけでなく、自らに対しても向かう行為である。『抑止』『防止』を連盟の活動から始めていく姿勢によって、そのことを内外に投げかけた。このガイドラインが、美術界の不均衡の改善の一端となり、美術が本来持つ多様性や自由さを開いていくことを願っている」。

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