今月25日からの開催を予定しながらも、妨害行為などによって会場変更を余儀なくされた「表現の不自由展・その後」の東京展。この開催をめぐり、同展を運営する表現の不自由展実行委員会が揺れている。委員のひとりが展覧会開催に対する意見の相違によって辞任したのだ。
辞任したのは、「あいちトリエンナーレ2019」以前から同実行委員会で活動してきた美術批評家のアライ=ヒロユキ。アライによると、実行委員会において「展覧会の抜本的中止」を提案したものの、これが「実行委員会で一顧だにされもしなかった」といい、辞任を決めたという。
アライは展示継続について、「泥沼で見通しのあまりない展示継続闘争は、組織だけでなく、出品作家を無為に消耗させる」としており、「出品作家は右翼との戦いを前提に出品同意したのでなく、美術展覧会への参加が前提。美術作家と作品は、特定の市民運動のための、兵士でもなければ弾でもない」「無益不毛な展覧会継続闘争は、厳しい状況に置かれている美術界に大きな傷跡を残す。作家たちを萎縮させない社会的責任というものがある」と中止の理由を主張。いっぽうで実行委員会は13日に「開催続行宣言」をしており、あくまで会場での展覧会開催を目指す委員会との間に亀裂が生じたかたちだ。
アライは実行委員会への「復帰や再合流はない」としつつ、開催主体が異なる不自由展の名古屋展や関西展については高く評価するとしている。