ディエゴ・ベラスケス、フランシスコ・デ・ゴヤなどヨーロッパの古典美術作品を多く所蔵していることで知られるスペインのプラド美術館が常設展を再編成。女性や非ヨーロッパのアーティストの作品により焦点を当てるという。
同館は、1819年に歴代のスペイン王家のコレクションを展示する「王立美術館」として開館。1868年に「プラド美術館」と改称し、現在は、油彩画、彫刻、版画、ドローイングなど2万1000点以上の作品を収蔵。2012年の時点では、そのうちの約1300点が展示されており、約3100点がほかの美術館などに貸与されている。
昨年、同館は「Uninvited Guests」と題された展覧会を開催し、コレクションにおけるジェンダーの不均衡を明らかにしようと試みた。しかし同展では、女性より男性アーティストの作品が多く展示されていたため、女性差別を強調しようとしていると非難された。
今回の再編成は、同展の反省から行われるもので、19世美術の展示見直しから着手される。ガーディアンによると、同館は女性アーティストの作品に注目する展覧会を継続して開催するいっぽうで、常設展においてはより多くの女性アーティストを取り上げ、その作品の新規収蔵にも取り組んでいくという。
同館館長のミゲル・ファロミアは、「『Uninvited Guests』から得た教訓の一部がコレクションに反映され、スペインの19世紀がどのようなものであったかについて、より多面的なビジョンを与えることを試みる」と述べている。
また同館は、女性アーティストの可視性を高めるプロジェクトの研究を推進しており、ジェンダー問題の調査のための研究助成金を提供予定。女性アーティストのほか、フィリピンなど「関連性が非常に高いが、展示がまだ不十分な」国の美術作品にも注目し、その存在感を高めることに取り組む予定だという。
近年、サンフランシスコ近代美術館やボルチモア美術館などのアメリカの美術館が、コレクションにおけるジェンダーギャップを是正するため、女性や有色人種のアーティストを新規収蔵するなどの動きも見られている。プラド美術館は今回の再編成で、どのような作品を新たに展示・収蔵するのか。注目したい。