美術館を再開する前に。ICOM(国際博物館会議)が新型コロナの基本対策を公開

グローバルな博物館組織「ICOM」(国際博物館会議)が、新型コロナウイルスが蔓延するなかで再開する美術館・博物館のための基本的な対策を提示した。

(C)Pixabay

 ICOM(International Council of Museums;アイコム、国際博物館会議)は、新型コロナウイルスの蔓延が続くなか、再開しようとする美術館・博物館のための基本的な対策として、36の項目を提示した。

 ICOMは、第二次大戦後の1946年に発足された組織であり、世界唯一のグローバルな博物館組織。世界138の国と地域から4万人以上の美術館・博物館のエキスパートと3000以上の館が会員として登録する巨大組織だ。

 今回、そのICOMが提示したのは来館者とスタッフの安全確保に関するもの。大きく分けて「来館準備」「パブリック・アクセス(来館者の導線)」「パブリック・アクセス(健康対策強化)」「パブリック・アクセス(必要に応じたアクセス制限)」「受付と警備」「清掃」「オフィス」の7項目。ここからとくに注目すべき項目を抜粋して紹介する。

来館準備

・展示室あたりの入場者数の上限を定め、一般に周知する(1平米あたりの最大人数を設定し、各入場者間の安全距離を1.5メートルとすることを推奨する)。
・滞在時間を設定し、時間枠を設ける。
・可能なかぎり、予約システム(オンライン、電話、電子メール)を設定すること。オンラインチケットシステムを設置すること。
・「65歳以上」など、特定のグループに特化した開館時間を検討すること。
・症状が見られる来館者の入館を拒否すること。
・施設のウェブサイトや入館前において、制限事項を通知すること。

パブリック・アクセス(来館者の導線)

・1.5メートルの距離が維持されるように、床へのマーキングを検討すること。
・不必要な取り扱いや接触を避けるため、スタッフの立ち会いが必要なクロークを閉鎖すること(ロッカーは定期的に消毒することで使用可能)。
・可能であれば一方通行で鑑賞できるようにすること。

パブリック・アクセス(健康対策強化)

・館内入口に手指消毒器を設置し、健康対策を遵守するよう促す表示を行うこと。
・オーディオガイド、ヘッドフォンなどは使用のたびに消毒すること。
・障害者支援用および教育目的の操作ボタンを備えた機器は、消毒剤を使用して頻繁に洗浄すること。
・館内のドアは(可能であれば)開けたままにしておくこと。できない場合は、使用するたびに消毒すること。

パブリック・アクセス(必要に応じたアクセス制限)

・清掃や消毒が行き届かない部屋や施設への立ち入り制限。
・現代美術などに見られるインタラクティブなインスタレーションは閉鎖すること。
・エレベーターの使用は移動に制約のある人だけに制限すること。また利用する際は、各利用者間の距離を1.5メートル確保すること。ボタンは使用後、必ず消毒しなければいけない。

受付と警備

・受付や館内には警備員を常駐し、来館者と展示作品とのあいだに十分な距離を確保するだけでなく、来館者同士のあいだにも十分な距離を確保しなければならない。必要に応じて、作品と来館者の安全を確保するために、スタッフを追加すること。
・スタッフに適切な防護用品(レジのシールド、マスク、消毒剤)を提供すること。

清掃

・各国の方針に従い、清掃頻度を向上させること。
・一般来館者がアクセスできるエリアはすべて、最低でも毎日清掃すること。

バックオフィス

・移動や作品輸送などを最小限に抑えること。
・スタッフがアクセスできる場所は、各国のガイドラインに基づいて清掃すること。
・複数のスタッフが使用する共通の備品は、定期的な消毒が必要。消毒がない場合は使用してはならない。
・スタッフは清掃サービスの有無に関わらず、毎日職場の清掃・消毒を行うこと。
・現場に出向く必要のないスタッフは、国の規定に基づきリモートワークの継続などを行うこと。

 なおICOMでは、こうした基本対策がなされない場合、美術館は再開すべきではないとしている。ミュージアムや文化行政関係者は、原文も参照してほしい。

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