新芸術監督・片岡真実は何を目指すのか? あいトリから国際芸術祭「あいち2022」へ

これまで4回開催されてきた「あいちトリエンナーレ」が名称と体制を変え、次回2022年から国際芸術祭「あいち2022」として開催される。このチャレンジングな芸術祭をディレクションする芸術監督として、森美術館館長の片岡真実が就任。愛知芸術文化センターにて記者会見を行った。

大林剛郎と片岡真実

 2010年の初回以来、4回の開催を経て徐々に日本を代表する国際展としての地位を確立してきた「あいちトリエンナーレ」。その名称が変わり開催される2022年の国際芸術祭「あいち2022」の芸術監督に、森美術館館長の片岡真実が就任。初の記者会見が愛知芸術文化センターで行われた

愛知芸術文化センター

 あいトリから数えて初の女性芸術監督となる片岡は、地元・愛知県名古屋市の生まれ。愛知教育大学美術科を卒業し、ニッセイ基礎研究所都市開発部、東京オペラシティアー トギャラリー・チーフキュレーターを経て、2003年より森美術館に勤務。20年より同館館長を務めている。また14年からは国際美術館会議(CIMAM)理事を務め、20年から会長。国際的な人脈も広く、第9回光州ビエンナーレ(2012)の共同芸術監督や、第21回シド ニー・ビエンナーレの芸術監督(2018)など国際芸術祭での経験もある。

 「あいち2022」では、従来の県知事がトップを務める実行委員会方式から体制を変更し、組織委員会を軸に運営される。この初代会長には、アートコレクターとしても知られる大林組取締役会長の大林剛郎がすでに就任しており、今回の片岡の人選も大林の決断によるものだ。

 選任理由として、大林は「国際的なキュレーター、ディレクターとして豊富な経験と実績を有しており、国際 水準の芸術祭が期待できること」「国内外で美術関係を中心とした豊富なネットワークを有しており、コロナ禍においても国内を拠点としつつ、2022年に向けて国際芸術祭の開催準備ができること」「館長などの重責を担っており、適切かつ柔軟な組織運営を行うことができること」「愛知県出身で、地域の状況を把握しており、地域特性を活かした『あいち』の魅力向上・発信が期待できること」「初めての女性監督であり、新たな視点による芸術祭が期待できること」などを挙げている。

 就任会見に挑んだ片岡は、「いまや現代美術は世界中にネットワークが張り巡らされた共通言語で、世界の動向を反映した縮図。芸術は必要不可欠なのか、という問いにも直面しているが、現代美術は先の見えない不確実な世界にこそ力を発揮する。芸術は精神の糧であり、思考の糧となる」としつつ、芸術監督を引き受けた理由について、次のように語った。

 「私の現代美術の礎は愛知県で築かれた。いまは森美術館館長の仕事に集中したいし、(芸術監督を)引き受けることはないだろうと思っていた。しかし私は愛知出身であり、昨年のことにも少なからず心痛めていたので、何か新しいことがホームタウンでできればと思い、引き受けた」。

片岡真実

 次回を語るうえで欠かせないのが、あいちトリエンナーレ2019をめぐる一連の動きだが、片岡は「国際芸術祭は毎回ディレクターが交代するのが一般的で、『あいち2022』はこれまでのあいちトリエンナーレとは異なる、自立したもの」だと断言する。「あえて言うならば、あいトリ2019の議論はほぼ出尽くした。そこで学んだことをいかに活かすのか。分断があるのであれば、その溝を埋める方法を考えるとき。結束が求められる時代、『あいち2022』は人類が求める未来をともに考えるプラットフォームとならなければならない」。

 そんな片岡は、「あいち2022」のあるべき姿として、地域に根ざすこと、移動が制限されているなかでいかに国際展をつくるか新しいモデルをつくること、現代美術とパフォーミング・アーツが融合する枠組み踏襲しつつ、新領域に取り組むこと、ラーニングプログラムを重視すること、そして「県民のための、県民による芸術祭」を目指すことなどを掲げる。

 地元愛知出身であり、キュレーターとしてのキャリアも国際経験も豊富な片岡が、2022年に何を見せるのか。今後のテーマ発表が待たれる。

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