コレクションの保存と管理のための資金調達のために、ニューヨークのブルックリン美術館がコレクションから12点の作品をクリスティーズに出品することがわかった。
ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、一部の作品は、10月15日にクリスティーズ・ニューヨークで開催される「オールド・マスターズ」と「ヨーロピアン・アート」のセールに出品され、その他の作品は10月1日〜20日に行われるオンラインセールで販売。なかには、ルーカス・クラナッハやロレンツォ・コスタなどルネサンス期の画家から、ギュスターヴ・クールベやカミーユ・コローなど19世紀のフランス近代美術家の作品が含まれている。
これらの作品の合計落札価格は230万ドル〜350万ドル(約2億4200万円〜3億6800万円)と推定されており、売却益は美術館のコレクション保存と管理や、学芸員や保存修復士などの給料に充てられるという。
同館館長であるアン・パステルナークは、今回の決定は「私たちにとって難しいことだ」としながら、「しかしこれは施設にとっても、コレクションの寿命を延ばして手入れをするためにも最善のことだ」とコメントしている。
新型コロナウイルスの影響により、世界中の美術館は危機的な財政状況に直面。こうした状況下、アメリカ、カナダ、メキシコの美術館館長によって構成され、かつては所蔵作品を売却した美術館を制裁したこともあった「美術館長協会」(AAMD)は今年4月、美術館が運営を維持するためにコレクションから作品を売却することを認める方針を示した。
AAMDはこれまで、美術館のコレクションの売却収入はすべて新規収蔵のために使用されるべきだと主張してきた。近年、サンフランシスコ近代美術館やボルチモア美術館などのアメリカの美術館が、女性や有色人種のアーティストを新規収蔵するなどコレクション整理のために作品を売却することが珍しくない。
ブルックリン博物館は昨年、資金調達のためにフランシス・ベーコンの大作《Pope》(1958)をサザビーズで売却。ニューヨークのエバーソン・ミュージアム・オブ・アートも今月、ジャクソン・ポロックの抽象画《Red Composition》(1946、予想落札価格は1200万ドル〜1800万ドル)をクリスティーズに出品することを発表している。