明治・大正期に建設された元シードル工場「吉野町煉瓦倉庫」を改修し、4月11日に開館する現代美術館「弘前れんが倉庫美術館」。2018年5月の着工以来、改修工事が進められてきた同館が、2月28日に竣工した(3月31日追記:新型コロナウイルスの影響で開館は延期となった)。
弘前れんが倉庫美術館の建築設計を手がけたのは、エストニア国立博物館などを手がけたことでも知られる建築家・田根剛。田根が日本で初めて手がける本館は、「記憶の継承」をコンセプトに、できるかぎり煉瓦倉庫の素材を活用して、その姿をとどめることを前提に作業が進められてきた。
竣工したその姿からは、「シードル・ゴールド」のチタン製の菱葺屋根や、高さ最大15メートルの吹き抜け空間、もともとあったコールタールの質感を活かした壁など、独特の意匠がうかがえる。
本館は、この建築空間を最大限に生かし、国内外のアートを紹介するとともに、弘前と東北地域の歴史や文化と向き合う作品を収集・展示。また、施設内には大小5つの展示室のほか、スタジオやライブラリーも設置。地域住民が集まるコミュニティの場としても機能する。
オープニングの展覧会として予定されているのは「Thank You Memory ー醸造から創造へー」。シードル工場から美術館へと生まれ変わるこの建築の記憶に焦点を当て、アーティストたちの独自の視点でその記憶を再生、改修工事の記録に基づく作品や、地元の人々と協力して制作するサイト・スペシフィックなコミッション・ワークなどが並ぶ展覧会だ。参加作家は、藤井光、畠山直哉、ジャン=ミシェル・オトニエル、ナウィン・ラワンチャイクン、笹本晃、イン・シウジェン、奈良美智、潘逸舟。
全貌が見えてきた弘前れんが倉庫美術館。約1ヶ月後のオープンに注目が集まる。