「世界の交差点」であり消費主義の中心と言われるニューヨークのタイムズ・スクエア。ここに、大量生産や消費主義を批判するパブリックなインスタレーション《Plastic Bag Store》が登場する。
本作は、ブルックリンを拠点に活動するアーティスト、ロビン・フロハルトによる没入型のサイトスペシフィックな作品。ニューヨーク市が今年の3月から実施するビニール袋の使用禁止法案に合わせて制作されたものだ。フロハルトは、ごく普通の食料品店にあるような、アイスクリームや惣菜、掃除用品までを、何千もの使い捨てビニール袋を使用して再現。スーパーマーケット同様にこれらを陳列し、鑑賞者はショッピングするかのように作品を見ることができる。
このスーパーは、夜になるとフロハルト制作のオリジナルの演劇と人形劇の舞台になる。フレディ・プライスのオリジナル・ミュージックとともに、ポメグラネイト・アーツがプロデュースしたこの人形劇は、人間が残していく大量のプラスチック廃棄物が、未来の世代によってどのように誤解されるかを提示するものだという。
同作についてフロハルトはこうコメントしている。「《Plastic Bag Store》は視覚的に豊かで触感があるユーモラスな体験であり、プラスチックの永遠性、使い捨ての永続性、そして何かを捨てることに対する異なる考え方の可能性を探り、奨励するもの。資本主義の落とし穴には素晴らしいユーモアがあり、私はユーモアと風刺が社会批判の強力なツールになりうると思っている。とくに、悲しみ、圧倒されて直接立ち向かうことができないような問題に対しては」。
2015年、国連は2030年までに達成すべき国際社会共通の目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」を制定。各国政府は、貧困や飢餓、保健、気候変動など17の課題をめぐる目標を立て、行動計画や予算を設定している。
SDGsについては、アート界でも様々な動きが始まっている。筆頭として挙げられるオラファー・エリアソンは2014年〜18年、コペンハーゲン、パリ、ロンドンで解けてゆく氷の塊の屋外インスタレーション「アイス・ウォッチ」シリーズを展示。加えて、過去20年間の氷河の大きな変化を示す作品の制作や二酸化炭素排出量の削減など、様々な側面で環境に配慮している。
今回のロビン・フロハルトやオラファー・エリアソンの例にあるように、アート界においてもSDGsは重要なテーマとなりつつある。こうした世界の動向にぜひ注目してほしい。