台湾を代表する映画監督のひとりである蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)による『你的臉』の日本公開が決定。邦題を『あなたの顔』として、6月27日よりシアター・イメージフォーラムほか全国にて順次公開される。
1992年に『青春神話』で映画監督デビューを果たしたツァイは、第2作『愛情萬歳』(1994)でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を、第3作『河』(1996)でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。つねに世界の注目を浴び、巨匠へと昇りつめた。
しかし、ヴェネチア国際映画祭で審査員大賞を受賞した2013年の『郊遊〈ピクニック〉』を最後に、商業映画からは離れることを宣言。近年は舞台演出やアートインスタレーションなどを制作していた。
そのツァイが5年ぶりに放つ映画作品は、台湾に暮らす市井の人々と、ツァイ作品になくてはならない俳優であり監督の李康生(リー・カンション)が出演するドキュメンタリーだ。カメラの前で自由に話し、動く13人の登場人物の「顔」が、極端なクローズアップと洗練されたライティングによって細部まで映し出され、目や口元、そしてそれぞれの顔に刻まれた皺が、人々の生きてきた時間を象徴するような作品となっている。
ヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアを迎えた際には、ハリウッドレポーター誌に「彼は映画人生の新たな一歩を踏み出した」と言わしめた本作。台北電影節で最優秀ドキュメンタリー賞と監督賞、音楽賞を、また金馬奨では最優秀ドキュメンタリー賞を受賞したほか、18年の東京フィルメックスでも上映され、話題を集めた。
本作の音楽は坂本龍一が担当。『愛情萬歳』以降、既成楽曲のみを使用してきたツァイが、24年ぶりにオリジナル劇伴を用いた作品となる。本作によって坂本は、台北電影節の音楽賞を受賞した。ツァイから直々に連絡を取り、実現したというこのコラボレーションにも注目したい。