今年で8回目の開催を迎える予定だったアジア最大のアートフェア「アート・バーゼル香港2020」の開催中止が決定した。中止は新型ウイルスの拡大に伴うもので、同フェアが中止されるのは今回が初めて。
同フェアには、世界各国から241のギャラリーが参加する予定だったが、新型コロナウイルスの拡大に伴い、アートワールドでは開催に対する危機感が高まっていた。
1月30日にはフェア主催者が出展ギャラリーに異例とも言えるレターを送付。「皆様、皆様のチーム、我々のチーム、そして関係者全員の健康と福祉が最優先の関心事であり、我々は差し迫った多くの期限を同様に理解しています。事態の緊急性を十分に認識しており、可能な限り速やかに解決策を提供します」としていた。
中止の原因として、アート・バーゼル側はコロナウイルスによる「フェアに参加し、働くすべての人々の健康と安全に対する基本的な懸念」に加え、「作品制作とフェアの輸送が直面する深刻な物流上の課題」「海外渡航における問題の深刻化」を挙げている。
アート・バーゼルのグローバル・ディレクター、マーク・シュピーゲルは「アート・バーゼル香港をキャンセルするという決定は、私たちにとって非常に難しいものだった」とコメント。「多くのギャラリー、コレクター、パートナー、外部の専門家からアドバイスや意見を収集し、他のあらゆる可能な選択肢を探った」としながら、「私たちのチームは3月のショーが成功させるため、1年をかけて多大な時間と労力を費やしました。不幸なことに、新型コロナウイルスの突然の発生と急速な拡大が、状況を根本的に変えた」と悔しさを滲ませている。
また香港の責任者であるディレクター・アジアのアデリン・ウーイは「世界中、とくに香港の出展者、パートナー、そして友人に深く感謝する。彼らは過去数ヶ月にわたり私たちを支援し、洞察と意見を共有してきた」と感謝を述べつつ、「(我々の)アジアと香港へのコミットメントに変更はなく、2021年の開催を待ち望んでいる」と前向きな姿勢も見せる。
今回のフェアをめぐっては、すでに複数のギャラリーが出展キャンセルを申し出ており、出展料のディスカウントを求める声も上がるなど、これまでにはない動きが見られた。香港を拠点とする45のギャラリーからなる「香港アートギャラリー協会(HKAGA)」は開催支持を表明したものの、新型コロナウイルスによるリスクへの懸念は拭いきれなかった。
なお、前回のアート・バーゼル香港では5日間の会期中で過去最高となる8万8000人が来場。次回は2021年3月25日から27日の会期での開催が決まっている。