2020.1.24

新型コロナウイルスの拡大で中国美術館が相次ぎ休館。アート・バーゼル香港の開催に懸念

2019年12月末より、中国湖北省武漢市を中心に拡大している新型コロナウイルスによる肺炎。その影響を受け、中国国内の美術館が続々と休館の声明を発表した。3月17日の開催を予定しているアジア最大級のアートフェア「アート・バーゼル香港」の開催も懸念される。

上海油罐芸術中心(TANK Shanghai) Courtesy of TANK Shanghai
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 2019年12月末より、中国湖北省武漢市を中心に拡大している新型コロナウイルスによる肺炎。中国本土での感染者数は増加の一途をたどっており、日本でも感染者が確認された。この影響を受け、武漢市当局は市外に向かう鉄道駅や空港、そして市内の公共交通機関を一時閉鎖・停止すると発表し、中国国内の美術館も続々と休館の声明を発表した。

 昨年11月にオープンした西岸美術館(ウェストバンド・ミュージアム)や、龍美術館(ロング・ミュージアム)、ユズ美術館、上海油罐芸術中心(TANK Shanghai)、上海現代摂影芸術中心などの美術・文化機関が集結する上海・西岸エリアを管理しているウェストバンド・グループは、上記機関をすべて本日から休館し、西岸美術館で開催予定のパブリック・教育プログラムも中止すると発表した。

上海当代芸術博物館

 このほか、上海当代芸術博物館や上海民生現代美術館、ハウ美術館、北京民生現代美術館も休館を発表。再開の日時は改めて知らせるという。

 なお中国では1月24日〜30日に春節(旧正月)の大型連休に入るため、一部の美術館はすでに休館している。北京のレッドブリック美術館(1月20日〜31日休館)、UCCA(1月24日〜2月2日休館)は今回の肺炎について声明を発表していないが、しばらく再開の見込みは立たないだろう。

 いっぽう、マカオ文化局は、その管轄下にあるすべての公共図書館を1月24日14時から、そのほかの文化施設を25日から休館するとを発表した。

 香港では、アートセンター・大館(タイクン)は24日に開館しているが、16時から春節連休のため、一部のサービスを停止するという。今回の新型肺炎に対する措置について、同館の関係者は、「主にはチーム内で警戒すること。消毒は館内全体で強化されており、特別な事情がなければ中国本土への出張などは認められない。開館時間を短縮する可能性もある」とコメントしている。

アート・バーゼル香港2019の会場風景より、塩田千春《Where Are We Going?》(2017-18) © Art Basel 

 また、3月17日の開催を予定しているアジア最大級のアートフェア「アート・バーゼル香港」は、昨年8万8000人の来場者数を記録。今回の新型肺炎がさらに拡大すれば、同フェアの開催が大きく懸念されるだろう。

 美術手帖の取材に対し、アート・バーゼルは次のようにコメントしている。「アート・バーゼルは事態を深刻に受け止めており、引き続き状況を注意深く監視し、世界保健機関(WHO)の意見に従っている。現時点では、3月のフェアに影響がおよぶとは思わない」。

 なお、現時点でWHOは今回の肺炎について、「現在入手可能な情報に基づき、中国への旅行や貿易の制限を適用しない」と判断している。