美術手帖 2019年6月号
「Editor’s note」

5月7日発売の『美術手帖』 2019年6月号の特集は「80年代★日本のアート」。編集長・岩渕貞哉による「Editor’s note」をお届けします。

『美術手帖』2019年6月号より

 今号は「80年代★日本のアート」特集をお送りします。

 近年、にわかに1980年代の日本の美術が脚光を浴びている。主な展覧会を挙げると「起点としての80年代」(2018〜19、金沢21世紀美術館、高松市美術館、静岡市美術館)、「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」(2018〜19、国立国際美術館)、村上隆による企画「バブルラップ」(2018〜19、熊本市現代美術館)、海外では「パレルゴン」(2019、Blum&Poe、同ギャラリーで開催され国際的評価の機運をつくった「もの派」展と同じく吉竹美香の企画)となる。

 70年代の「もの派」、90年代の「ネオ・ポップ」から「スーパーフラット」の動向に比して、80年代の美術の語りにくさはどこからくるのか? そして、「もの派」と「スーパーフラット」のあいだには、かなりの飛躍があるように見える。とすると、80年代に何が起こったのか、それを見極めることが、日本の美術史における喫緊の課題であるのだろう。

 本特集では、大きく2つの点に焦点を当てている。ひとつは、80年代前半のアートシーンで巻き起こった「ニュー・ウェイブ」である。ここでは、旋風の当事者たちに話を聞くことで、この時代の空気感にふれてみてほしい。もうひとつは、消費社会とニューメディアの隆盛にともなって新たな局面を迎えた、音楽やイラストレーションなどカルチャーの動向を、拡散に向かったアートとの関連と合わせて紹介する。今回様々な論点が提出されたが、特集ひとつで結論めいたものが出るわけもなく、扱いきれなかった事項も多いので、機を見て引き続き取り上げていきたい。

 第2特集では「平成の日本美術史30年総覧」と題して、2019年4月で幕を閉じた「平成の美術」を振り返った。特集と合わせてこの40年を振り返りつつ脳裏をかすめたのは、これから始まる「令和の美術」についてだった。その予兆は、水面下ですでに始まっているはずだ。

 最後に、この号では「第16回芸術評論募集」の審査結果と次席受賞作を掲載しています。新しい時代を切り拓く気鋭の評論家の誕生を祝すとともに、美術メディアとして「共闘」していく気持ちです。あらためて、受賞された皆様おめでとうございます。

『美術手帖』2019年6月号「Editor’s note」より)

編集部

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