「名古屋城本丸御殿」は、尾張藩主の住居・藩の政庁として、1615(慶長20)年に徳川家康の命によって建てられた、日本を代表する近世書院造の建造物だ。1930年には天守閣と共に、城郭として国宝第1号に指定され屈指の名城として知られていたものの、45年の空襲により建物のすべてを焼失。
しかし幸いにも焼失を逃れた、1049面の障壁画、309枚の実測図、約700枚の写真、約2000個の礎石など、他に例を見ないほどの豊富な史料が保管されており、名古屋市観光文化交流局名古屋城総合事務所は様々な分野の専門家の協力を得て、2009年より復元工事に着手。今年、10年をかけた復元計画を終える。
6月8日の完成公開でその全容が披露されるにあたり、美術家の山城大督が監督を務め、音楽家の蓮沼執太が楽曲を手がけたスペシャルムービ一が発表された。
建築の表情、美しい意匠をとらえるため、朝日が差し込む早朝に撮影の大半が行われたという約2分の映像。当時の本丸御殿を記録した第一級史料であり、復元計画において重要な資料となった「ガラス乾板写真」から映像がスタートし、曲線を帯びた屋根、水平垂直からなる軒、豪華絢爛な欄間や飾金具、天井板絵、障壁画など、本丸御殿の魅力があますことなく収められている。
完成公開日の一足先に、江戸の技術と精華が集った本丸御殿の世界観を体感してほしい。