「MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless」(以下EPSON teamLab Borderless)は、森ビルとチームラボが東京・お台場で共同運営する世界初の「デジタルアートミュージアム」。施設面積は約1万平方メートルという圧倒的なスケール感と、多様な空間構成を特徴とする本施設。館名にも採用されている「Borderless」という言葉には、「作品と作品」「作品と鑑賞者」「自己と他者」の境界をなくし、鑑賞者も作品の一部となって溶け込んでいく、という想いが込められている。
開館発表時から話題を集めてきた同施設だが、その開業日が6月21日となることが発表された。これを前に、施工中の同館でプレス向けの内覧会が開催。森ビルからは同施設担当者の杉山央が、チームラボからは代表の猪子寿之が登壇した。
杉山は同施設について「2020年に向けた新たなディスティネーション。新たなビジネス、価値、ライフスタイルを世界に発信する場としていきたい」とその狙いを語る。いっぽう猪子はここを「いまは実験的かもしれませんが、将来振り返ったとき、世界から見てエポックメイキングだと思われる場をつくりたかった」と話す。
「境界のないアート群からできており、空間の中を自らの身体で探索し、ときには彷徨い、新たな体験をする。そして他の人々とともに、新しい体験をつくっていく場になればいいなと思っています。『ボーダレス』はチームラボのコンセプトを象徴したもの。アート群が境界のないかたちで存在し、また個人と他者の関係もなくしていく。世界と自分との関係性を考え直していく場所になる」。
では展示構成を見ていこう。「EPSON teamLab Borderless」は、大きく分けて5つの空間で構成されている。
まずその核となるのが「Borderless World」だ。ここではその名の通り、境界のないアート群によって構成。作品それぞれが意思を持ち、自ら動き出し、様々な場所を行き交うことで来館者と関係性を持つ。また作品は、他の作品ともコミュニケーションし、影響を受け合い、ときには混ざり合っていくという。まさに「境界のない1つの世界」が最新のテクノロジーによって出現する。
続く「チームラボアスレチック 運動の森」は、チームラボがもうひとつの主要コンテンツと考えるセクション。「身体で世界をとらえ、世界を立体的に考える」をコンセプトにしており、「脳の海馬を成長させ、空間認識能力を鍛える新しい創造的運動空間」だという。
猪子はこう語る。「世界中で空間認識能力が注目されており、イノベーションやクリエイティビティと相関関係があると言われています。僕は地方の田舎で育ち、裏山で遊んでいましたが、現在の社会や学校では、身体は固定されてしまっている。都市は本やテレビ、スマートフォンの画面など平面情報に囲まれすぎていると思います。なので過度に身体を要求するような立体的な場をつくりました。身体でアートを知覚していく場です」。
「学ぶ!未来の遊園地」は、チームラボがこれまでも世界各国で展開してきた教育的なプロジェクト。紙に描いた絵がデジタル空間を泳ぎ回る「お絵かき水族館」など、他者との協働をテーマにした作品が並ぶ。
日本初公開となる「ランプの森」は、その名の通り無数のランプでできた空間だ。人がランプの近くで立ち止まり、じっとしていると、一番近いランプが強く輝き音色を発生させる。そしてそのランプの光は、もっとも近い2つのランプに伝播し、伝播したランプの光は、同じようにもっとも近いランプに伝播し、同じように連続していく。
広大な面積に作品がひしめくなか、休息できる場でもあるのが「EN Tea House」だ。ここでは佐賀・嬉野でつくられた新しい茶「EN TEA」を飲むことができるが、これも作品。お茶が注がれた茶器の中に花が生まれ、咲いていく様子を体験する空間で「食の文化的背景を紐解き、アートによって拡張していきたいと思い、お茶そのものを作品にした」のだという。
520台にもおよぶ巨大なコンピュータと約470台のプロジェクター、そしてチームラボのクリエイティビティが結集した巨大空間。世界的に高い人気を誇るチームラボによる日本初の常設施設は、新たな名所となるだろう。