一定の時空間でのみ存在する。
儚い彫刻作品を生み出す
アニアス・ワイルダーが個展を開催

何千もの木片を釘や接着剤を一切使用せず、時間をかけて緻密に積み上げてゆく彫刻インスタレーションで知られる現代美術家、アニアス・ワイルダーの個展が大阪のアートコートギャラリーで開催される。会期は5月19日〜6月23日。

アニアス・ワイルダー Collider 2008.11.18-200812.13

 アニアス・ワイルダーは1967年スコットランド、エディンバラ生まれ。90年代後半から現在にわたって作家活動を続けている。重力、時間、空間についての独自の考察から生み出されるワイルダーの彫刻的なインスタレーションは世界各地で評価され、国際的なキャリアを重ねてきた。

 ワイルダーの制作プロセスは、均一に製材された何千もの木片を、釘や接着剤をいっさい使用せず、木片の間に働く均衡と摩擦、重力の作用を見極めながら、時間をかけて緻密に積み上げてゆくという特徴的なもの。20年にわたる作家活動において、ワイルダーはつねに一定の条件に基づいて、最小限の要素のみを用いた作品を生み出している。

 その手法はごくシンプルで循環的でありながら、つねに非永続性が内在するワイルダーの作品群。一定の時空間にのみ体験することができるその存在は、樹木が木片へと加工されたのち、ワイルダーの手によって根気強く積み上げられたものだ。

 そのほとんどの作品が長い時間をかけていながら、一瞬にして崩壊しカオスへと帰す可能性を孕んでいる。時にはワイルダー自身が一蹴することによって解体され、ドミノのように崩れ落ちることもあるという。作品となるまでの気の遠くなるような時間の蓄積と、鋭いコントラストを奏でるように瞬時に消え去ってしまう儚い彫刻作品だ。

 高く積み上げられた膨大な量の木片は、無数の可能性の中からある一つの形へと結実していく時間の一刻一刻を想起させ、見る者に生命の循環をも再認識させる空間になり得るだろう。

編集部

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