NEWS / HEADLINE - 2018.2.17

美術手帖 2018年3月号
「Editor's note」

2月17日発売の『美術手帖』 2018年3月号の特集は「言葉の力。」。編集長・岩渕貞哉による「Editor’s note」をお届けします。

『美術手帖』2018年3月号より

『美術手帖』2018年3月号より

 今号は「言葉の力。」特集をお送りします。いま、私たちの言葉を取り巻く背景が大きく変わってきている。それは、詩や演劇、音楽、そして美術における言語表現に、どのような変容をもたらしているのか。そんな問いをもとに特集を企画した。

 特集の中でも多く言及されているように、社会的な背景には大きくふたつの事象が挙げられる。ひとつは、SNSの普及によるコミュニケーションのあり方が変わったこと。なかでも、匿名を含めた個人が発した140字の言葉が瞬時に拡散されていくTwitterは、「炎上」やフェイクニュースというかたちで、言葉の抽象性や実態のなさがときに社会を分断し混乱を招く要因となった。いっぽうで、InstagramやLINEのスタンプなど、非言語的で早いコミュニケーションが増えていっている。

 もうひとつは、2011年に起こった東日本大震災。この人間の想像力をしのぐような出来事にたいして、事態へのそれぞれの距離感が「当事者」という言葉で測られることで、正しさや共感など誰もが否定することのむずかしい方向に言葉の扱われ方も規定されていった。しかし、震災から7年経った現在、震災についての言葉も徐々に変容をみせているようだ。特集でも、誰が発するかや時代背景によって、同じ言葉でも受けとめられ方が変わるという言葉の特徴が、震災を契機により浮上してきたことが語られる。

 このような時代の状況にたいし、また言葉の普遍的な特性にたいして、詩人や音楽家といった言葉の表現を生業とする人は、どう応答しているのか。この特集で気づかされたのは、「言葉を手繰る人々」は、現在の言葉をめぐる環境の中で、何を表現するかだけではなく、言葉の使われ方や受けとめられ方など、メタレベルを意識してそこへ介入しようとしていることだった。そこでは、私たちがなにげなく使っている言葉というあやうい乗り物を乗りこなす、「技術」が必要となる。ともすると、「言葉の自動機械」(宮台真司)化に陥ってしまう私たちに、楔(くさび)を打ち込む、そんな存在としての言葉を扱うアーティストがいま存在感を増しているのだろう。

2018.02
編集長 岩渕貞哉

『美術手帖』2018年3月号「Editor’s note」より)