石内都は1947年群馬県桐生市生まれ。79年に自身が暮らした六畳一間のアパートを撮った写真集『Apartment』で第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。2005年には母親の遺品を写した「Mother's」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表を務め、14年には日本人女性として初めてハッセルブラッド国際写真賞を受賞するなど、国内外で高く評価されている。
75年に独学で写真を撮り始めた石内は、「絶唱、横須賀ストーリー」(1977)で写真家デビュー。40歳を迎えたことを機に、同い年の女性の顔や手足をクローズアップで撮影し始め、その後は、広島の被爆者が身に纏っていた衣服や、メキシコの女性画家フリーダ・カーロの遺品を写した作品を制作するなど、身体の傷跡をテーマにした写真を撮り続けている。
2017年は、石内がデビューしてからちょうど40年にあたる。本展では、この節目の年に、これまでの作品約170点を展示し、石内の表現活動を辿っていく。「肌理(きめ)」をキーワードに壁、肌、衣服などの写真を通して、「存在と不在」、「人間の記憶と時間の痕跡」を表現し続ける石内の世界を紹介する。
石内は本展開催に伴い、次のようなコメントを寄せている。「横須賀からスタートした写真の行方は、固有の気風にのせて歴史と身体と遺されたもの達が一体となり、肌理を整え、未来へ向けて発信する」。