1960年代から、日本を代表する写真家として活躍する「アラーキー」こと荒木経惟。77歳を迎えた今も、次々と大型個展を開催し新作を発表するなど精力的な活動を続けている。
本展は、その膨大な作品群のなかから、妻・陽子というテーマに焦点を当てた展覧会。荒木自らが「陽子によって写真家になった」と語るように、出会いからその死に至るまで、陽子はもっとも重要な被写体であり、死後もなお荒木の写真に多大な影響を与え続けてきた。
本展では、陽子を被写体とするシリーズのほか、その存在を色濃く感じさせる多様な作品1000点以上が出品される予定だ。なかでも、結婚式から新婚旅行までの様子を写した「センチメンタルな旅」は、東京都写真美術館が収蔵するオリジナルプリント全108点を展示。また、幻の初期作品「愛のプロローグ ぼくの陽子」も世界初公開される。
会期中には、美術史家の伊藤俊治、精神科医の斎藤環らが出演するトークイベントや、詩人の吉増剛造と作家の朝吹真理子が荒木作品についての自作の詩を朗読する朗読会も開催。
「センチメンタルな旅 1971- 2017-」という展覧会タイトルは、1971年に出版した私家版の写真集「センチメンタルな旅」に始まり現在へと続く、荒木経惟の写真人生そのものを表しているという。最愛の妻・陽子をテーマにした作品を通し、「私写真」という荒木の写真の真髄を体感したい。