近年、日本社会における国家主義を主題とした作品を多く制作してきたアーティスト・小泉明郎。2016年に無人島プロダクションで開催された「空気」展では、天皇を透明な存在としてキャンバスに描くことにより、天皇の身体とその存在を中心に日々繰り広げられる様々な儀礼に意識を向ける作品を発表し、大きな反響を呼んだ。
新作《夢の儀礼─帝国は今日も歌う─》は、小泉が幼少期に見た奇妙な夢を出発点に、日常に潜む文化の暴力を扱った作品として昨夏、東京で撮影された。出演者が語る小泉の夢の物語と、ナショナリズムに潜在する暴力や、ヒロイズムへの陶酔が交錯する現実の情景が何層にも重なり合った作品は、夢とも現実ともつかない、虚実入り乱れた異空間に鑑賞者を誘う。
同作は、近年の小泉が取り組む国家主義のテーマを、より作家本人の個人史に引き寄せた作品となる。