パレスチナ問題を考察する展覧会、ワコウ・ワークス・オブ・アートで開催。奈良美智も参加

東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートがパレスチナ問題を考察する展覧会「If I must die, you must live」を開催する。本展キュレーターはアーティストのヘンク・フィシュ。会期は5月17日〜6月29日。

ヘンク・フィシュ 私は何を知っているのか?(モンテーニュ) 2023 ブロンズ 高さ27cm© Henk Visch, courtesy WAKO WORKS OF ART 撮影=ヘンク・フィシュ

 東京・六本木のワコウ・ワークス・オブ・アートが、オランダ出身の作家ヘンク・フィシュのキュレーションにより、パレスチナ出身の詩人や画家の作品にフォーカスした展覧会「If I must die, you must live 私が死ななければならないのなら、あなたは必ず生きなくてはならない」を開催する。会期は5月17日〜6月29日。

 本展タイトルは、パレスチナの詩人リフアト・アルアライール(1979年生まれ)が最後にSNSに投稿した詩の冒頭部分。アルアライールはこの詩を投稿した翌月、イスラエル軍の空爆によって死亡した。本展では、このアルアライールが最後に残した詩が、全体を通底するメッセージとなるという。

 会場で紹介されるのは、フィッシュの新作を含む彫刻作品やドローイングのほか、ムスアブ・アブートーハ(1992年生まれ)の詩、画家スライマーン・マンスール(1947年生まれ)の版画、ガザのためにアーティストたちが制作したポスター(Posters for Gaza)など。また長年フィシュと親交があり、今回の企画の意図に賛同した奈良美智(1959年生まれ)の新作も展示される。

 ヘンク・フィシュは1950年オランダ生まれ。詩的で哲学的な思索から生み出される擬人化された立体や、鑑賞者の記憶に強く残る抽象性の高い造形作品によって1980年代頃から知名度を高め、ヴェネチア・ビエンナーレ(1988)やドクメンタ9(1992)をはじめ、数々の国際展に参加。2000年代以降は日本やシンガポール、中国などアジアにも活動の場を広げている。23年にはオランダのウィルヘルミナ女王就任100周年を記念して創設されたWilhelminaring 賞を受賞し、現在、その受賞記念展「 Dance in the Court of Justice」がCODA美術館(オランダ)で開催されている(〜6月23日)。

 ガザ地区の難民キャンプで生まれ育ったムスアブ・アブートーハは、学生の頃より詩の世界に親しみ、2022 年に出版した詩集『Things You May Find Hidden in My Ear: Poems from Gaza』が、パレスチナ・ブック・アワードやアメリカン・ブック・アワードを受賞。全米批評家協会賞の最終候補にも選ばれている。17年にはガザで初めての英語図書館であるエドワード・サイード公共図書館を創設。17年から19年までガザのUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)学校で英語教師として教鞭をとった。

 スライマーン・マンスールは73年にパレスチナ芸術家連盟を、94年にエルサレムにアル・ワシティ・アート・センターを共同設立しディレクターを務めるなど、長年パレスチナの美術界を牽引してきた画家のひとり。第一次インティファーダ(蜂起)の際には、ほかの作家たちとともに「ニュー・ビジョン」アート運動を始め、イスラエルからの物資をボイコットし、身の回りにある泥や木材、染料などの素材を作品に使用したことでも知られている。伝統的な衣装を身に纏った人々の姿や、パレスチナの土地を題材にした作品は、人々の長年にわたる苦難と抵抗の記憶を伝えるものだ。本展では版画作が展示される。

 ワコウ・ワークス・オブ・アートは本展について、「世代の異なる作家たちの想いや言葉が響き合う本展を通して、現在もなお苛酷な状況下にあるパレスチナの人々に思いを巡らすきっかけとなれば幸いです」としている。 

編集部

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