2019年に香港のCHAT(Centre for Heritage, Arts and Textile)で企画・開催され、その後、イングランド、スコットランド、スイス、そして国内では丸亀市猪熊弦一郎現代美術館を巡回してきた「須藤玲子:NUNOの布づくり」が、茨城県の水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催される。会期は2月17日〜5月6日。企画は高橋瑞木(CHAT 館長兼チーフキュレーター)、企画担当は後藤桜子(水戸芸術館現代美術センター学芸員)。
須藤は1953年茨城県石岡市生まれ。株式会社布代表で東京造形大学名誉教授。日本の伝統的な染織技術から現代の最先端技術を駆使し、新しいテキスタイルづくりを行なってきた。その作品はニューヨーク近代美術館やメトロポリタン美術館、ボストン美術館、ロサンゼルスカウンティ美術館、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、東京国立近代美術館などに収蔵されている。
本展は、須藤玲子とNUNOの布づくりを包括的に伝える大規模個展。会場では須藤の代表作を通してその創作の姿勢を伝えるとともに、NUNOのテキスタイルを世に送り出してきた日本各地の工場にも焦点を当て、「布づくり」を支える創造的かつ技術的なプロセスが包括的に紹介される。
また本展では完成品のテキスタイルだけでなく、そのデザインの源泉や制作過程からテキスタイルデザインに注目。アイデアの着想源から原材料やドローイング、製作サンプル、協働する工場や職人との試行錯誤や生産の過程まで、普段見ることのできない布づくりの舞台裏を一挙公開することで、NUNOのテキスタイルデザインの全貌に迫るものとなる。齋藤精一のアーティスティック・ディレクションによる、工場での生産の様子を再現したインスタレーションは注目ポイントだ。
大空間を泳ぐ、色とりどりのNUNOオリジナルテキスタイルを用いたインスタレーション「こいのぼり」も本展では展示される。須藤によって考案され、アドリアン・ガルデールの展示デザインにより、東京の国立新美術館(2018年)をはじめ世界各地で展示されてきたこの作品。今回は水戸藩に由来する染色技法「水戸黒」の再生に取り組む水戸市内の職人とともに、特別なこいのぼりが制作されるという。
また、磯崎新設計による水戸芸術館のシンボルタワーをモチーフにデザインされた新作テキスタイルも初公開される。