中国・上海にあるプライベート・ミュージアム「Powerlong Museum」(宝龍美術館)で、16名の日本人アーティストを紹介する展覧会「Under Current」が、2023年1月29日まで開催されている。
本展は、日中で活動する沓名美和をキュレーターに迎え、今後国際的にさらなる躍進が期待される16名のアーティストによる絵画や立体作品約100点を展示するもの。展覧会タイトル「Under Current」は見えない流れを意味し、流行や時代のメインストリームのうねりの下にあるもうひとつの流れを示唆するという。
参加アーティストは、猪瀬直哉、Kaga Atsushi、工藤麻紀子、熊谷亜莉沙、小⻄紀行、小林万里子、鈴木雅明、多田圭佑、⻑井朋子、名もなき実昌、平子雄一、松川朋奈、丸山太郎、森本啓太、安井鷹之介、山本雄基の16名。いずれも、90年代のバブル崩壊後、「失われた20年」といわれる日本経済の停滞期間に⻘春時代を過ごした、現在30代〜40代のアーティストだ。
展覧会は、「Another Story」「Scream」「Division and Conversation」「Song of the City」といった4つのセクションで構成。世界的評価を受けた草間彌生や村上隆、奈良美智などの次の世代のアーティストで、日本のアートシーンにおいて新たな時代性を模索してきた作家たちの作品と活動を体系的に展示することを試みている。
本展について、沓名はステートメントで次のような言葉を寄せている。
華やかな時代の終焉を生きてきた彼らの表現はポリティカルな視座を離れ、社会のもっとも繊細なディティールである「個」のアイデンティティを突き詰めることで、国家や文化的背景といった社会の枠組みや、ジェンダーやジェネレーションの差を超えて、誰しもが共感しうる人間の存在意義や普遍性に問いかける作品を数多く生み出すに至りました。また、世界的な流れとしてある大量消費社会から持続可能な社会への転換という潮流を間近に見つめてきたことで、自然への畏怖や生命に対する尊重、自然環境と人間社会が新たに紡いでいくべき関係性などに焦点を当てた未来志向の力強い作品も生まれています。彼女/彼らの作品に織り込まれたメッセージは、今まさに大きな発展を続けている中国の人々にとっても深い共感をもたらすものとなるでしょう。
なお、本展の参加アーティストのうち15名の作品を各1点ずつ紹介するサテライト展が、12月17日まで東京・目黒区にあるN&A Art SITEで展示されている。日本にいながら、日本のアートシーンにおいてもうひとつの潮流を探る作家たちの試みを体感してみてはいかがだろうか。