国内では約6年ぶりとなる写真家・川内倫子の美術館個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」が、10月8日〜12月18日に東京オペラシティ アートギャラリーで開催される。
川内は1972年滋賀県生まれ。2002年、『うたたね』『花火』(リトルモア刊)の2冊で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞。09年にICP(International Center of Photography)主催の第25回インフィニティ賞芸術部門、13年には芸術選奨文部科学大臣新人賞(2012年度)を受賞した。
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主な国内での個展は、「Cui Cui」(2008、ヴァンジ彫刻庭園美術館)、「照度 あめつち 影を見る」(2012、東京都写真美術館)、「川が私を受け入れてくれた」(2016、熊本市現代美術館)など。近刊には写真集『Des oiseaux』『Illuminance: The Tenth Anniversary Edition』『やまなみ』『橙が実るまで』(田尻久子との共著)がある。
本展は、川内の直近約10年の活動に焦点を当て、その作品の本質に迫るもの。展覧会タイトルにある「M/E」は、本展のメインとなる新作シリーズのタイトルから由来している。「M/E」とは、「母(Mother)」と「地球(Earth)」の頭文字をとっており、続けて読むと「母なる大地(Mother Earth)」、そして「私(Me)」の意味もある。
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展示会場は、同シリーズを中心に据え、未発表作品や国内で紹介される機会が少なかった作品を織り交ぜながら構成される。2019年にアイスランドで撮影した氷河や雪景色に、コロナ禍での身近な風景などを加えた「M/E」シリーズの全貌を本展で初めて披露する。
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また写真にとどまらず、これまで映像作品の発表や文章の執筆も行ってきた川内。本展では、映像作品や2018年に出版した写真絵本『はじまりのひ』を朗読したサウンドなども展示される。建築家・中山英之が空間設計を手がける会場では、川内の「自分が作品を制作する際に感じた感覚や経験を、展示空間において観賞者と共有したい」という想いに応えた空間がつくりあげられるという。
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柔らかい光をはらんだ淡い色調を特徴とし、初期から一貫して人間や動物、あらゆる生命がもつ神秘や輝き、儚さ、力強さを撮り続けている川内。写真や映像などを通し、その創作の本質や問題意識の核に迫る機会をお見逃しなく。
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