展示室のフロアが水に満たされ、水面には浮きシダやヒメスイレン、ゲットウなどの植物や浅い水域に生息する昆虫が存在する。それが、スイス・バーゼルの近郊にある私設美術館・バイエラー財団で開催中のオラファー・エリアソンの新しい個展「Life」の様子だ。
エリアソンは、本展のために同館建物の印象的なガラスのファサードを取り除き、展示室内と屋外の池を結びつけ、連続した水景をつくりだした。鑑賞者は、木製の通路を通じ、虫や人の往来の音、植物や水の匂いを感じながら、展示を楽しむことができる。
水面は、光の状態や天候によって様々な反射を見せるだけでなく、水の流れを研究するための無毒の蛍光色素であるウラニンが注入されている鮮やかな緑色の水は、夜になると展示室内の紫外線によって光り輝く。
外界を遮断する美術館のドアや窓が取り除かれたため、本展は昼夜を問わず開催されている。人間の来場者がいないときには、昆虫やコウモリ、鳥などの生物が飛んできて一時的に住み着き、時間の経過とともに、人間や非人間の介入や相互作用の痕跡が残される。
また展示室内や庭には、人間以外の生物の視点を模倣したカメラが設置。光学フィルターが装備されたこれらのカメラは、特設サイトのライブ配信を通じて昼夜を問わずアクセス可能。鑑賞者は、人間と非人間の交互の視点から展覧会を体験することができる。
エリアソンはステートメントで、次のように語っている。「『Life』では、美術館、私の作品、来館者、一緒に参加するほかの生物、公園の木やその他の植物、美術館を取り巻く都市の風景など、展覧会に関わり、影響を受ける人々の間で、共存する空間をつくることに積極的に取り組んでいる。私たちが共有している世界を集団で探求することで、すべての種にとって住みやすい世界にしていくことができると願っている」。
また、同館のディレクターであるサム・ケラーはこう続ける。「この作品は集団的な実験で、芸術、自然、制度、生活に関する私たちの慣習に挑戦し、その境界を解消しようとするものだ。作品には、植物、動物、人間、微生物が共存している。時間帯と天候の両方が、この展覧会の展開と認識に影響を与える」。