19世紀フランスを代表するレアリスム(写実主義)の巨匠、ギュスターヴ・クールベ(1819〜1877)。そのクールベが描いた海をテーマに、同時代の画家たちが描いた風景画も展観する特別展「クールベと海 ─フランス近代 自然へのまなざし」が開催される。会期は4月10日〜6月13日。
同展では、とりわけクールベが1860年代以降に集中的に取り組んだ「波」の連作を中心に紹介。その海景画の同時代性と特異性に迫る。
クールベは、現実を理想化して表現するそれまでの絵画を否定し、目の前の世界をあるがままに描くことで、既存の政治や美術制度に敵対的な態度を表明してきた。いっぽうでクールベは、故郷、フランシュ=コンテ地方の切り立った山や森、そこに息づく動物たち、フランス北部のノルマンディー地方の海など、厳しい自然の姿を繰り返し描いている。
スイス国境近くの山々に囲まれた小さな町、オルナンに生まれたクールベが、初めて海を目にしたのは22歳のとき。うねる波やどこまでも続く水平線に圧倒され、とくに1860年代以降、好んでその情景を描き、当時の人々から賛辞を得た。
波のみに肉薄したクールベの作品には、それまでの時代に描かれた物語性や感傷性に富む海とも、後の世代が描いた海水浴や浜辺での社交の情景を描いた身近な海とも、異なる視点で海がとらえられている。
同展では、クールベの海の絵画を中心として、故郷を描いた風景画や狩猟画、またクロード・モネやウジェーヌ・ブーダンなど、ほかの画家たちによる海を描いた作品を含む約60点を展観し、海、そして自然へのまなざしが大きく変わる時代にこの近代絵画の革新者がどのように自然と対峙したかを探る。