「性差(ジェンダー)の日本史」から最果タヒ展まで。今週末に見たい展覧会ベスト3

先週から今週にかけて始まった展覧会と12月6日までに終了する展覧会から、とくに注目したい3つをピックアップしてお届けする。予約方法や注意事項については、各館の公式ウェブサイトを参照してほしい。

「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」展示風景より

ジェンダーの形成や歴史を紐解く。「性差(ジェンダー)の日本史」(国立歴史民俗博物館)

 生物学的な性差(セックス)とは異なり、文化的・社会的に形成された男女の性差、「ジェンダー」。そのジェンダーの形成や歴史に焦点を当て、古代日本から丹念に紐解いていく企画展示「性差(ジェンダー)の日本史」が12月6日まで国立歴史民俗博物館で開催されている。

展示風景より、右は重要文化財の高橋由一《美人花魁》(1872、東京藝術大学蔵)

 「政治空間」「仕事とくらし」「性の売買」といった3つの側面からジェンダーを読み解く本展では、280点以上の展示資料が7つのセクションにわけて紹介。国立歴史民俗博物館研究部教授・横山百合子をはじめ、20名以上のメンバーとの共同研究で本展の企画を行ったという。

 古代の政治におけるジェンダーや、中世から近世における「女性向けの仕事」「男性向けの仕事」を経て、「性の売買」をテーマにしたセクションに注目したい。売春を専業としてはおらず、芸能や宿泊業なども自ら行う、「遊女」と呼ばれる女性たちは、江戸時代に入ってからものとして扱われるようになっていった。本展では、高橋由一の代表作《美人(花魁)》のほか、遊女たちが書いた手紙や日記など豊富な資料を展示し、売買春の変遷にも迫っている。

会期:2020年10月6日~12月6日
会場:国立歴史民俗博物館 企画展示室A・B
住所:千葉県佐倉市城内町117
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~16:30 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般1000円 / 大学生500円
会期中の土・日・祝日、終了前1週間はオンライン入場日時指定事前予約も可能。予約のない場合も、定員に達していない時間帯は、当日来館しての時間指定が可能。ただし、事前予約が優先となり、来館時には予約枠が定員に達して入室できない場合あり。

 

河鍋暁斎の下絵や画稿に注目。「河鍋暁斎の底力」(東京ステーションギャラリー)

 江戸時代末期から明治時代にかけて活躍した絵師・河鍋暁斎(1831~89)。その下絵や画稿を中心とした展覧会「河鍋暁斎の底力」が東京・丸の内の東京ステーションギャラリーで開幕した。

展示風景より、《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》(制作年不詳)

 7歳にして浮世絵師・歌川国芳のもとで絵を学び、戯画や風刺画を始めとした幅広い作風の絵を描き活躍した暁斎。本展の最大の特徴は、暁斎の本画を一切展示せず、素描、下絵、画稿、宴席などで即興で描かれた席画、絵手本などだけで構成される点だ。

 その意図は、これらの作品が彩色に弟子の手が入ることもある本画や、彫師や摺師の協力が不可欠な版画と異なり、すべて暁斎の手で描かれたものということとなる。表舞台に出ることの少ない下絵や画稿類を中心に、暁斎の描写と表現の力量を「描かずにはいられない 写生 模写 席画等」「暁斎の勝負ごころ 下絵類」「暁斎の遺産 絵手本」の3章構成で紹介している。

会期:2020年11月28日〜2021年2月7日(会期中展示替えあり、前期は11月28日〜12月27日、後期は1月2日〜2月7日)
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485
開館時間:10:00〜18:00(金〜20:00)
休館日:月(1月11日、2月1日は会館)、12月28日〜1月1日、1月12日
料金:一般 1200円 / 高校・大学生 1000円 / 中学生以下無料
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため開催内容が変更の可能性あり

 

最果タヒによる“詩の展示”。「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」(PARCO MUSEUM TOKYO)

 現代詩手帖賞(2006)や中原中也賞(2008)、現代詩花椿賞(2015)を受賞するなど、いまもっとも注目すべき現代詩人・最果タヒ。その個展「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」が、12月4日に渋谷パルコのPARCO MUSEUM TOKYOでスタートした。

「最果タヒ展 われわれはこの距離を守るべく生まれた、夜のために在る6等星なのです。」展示風景より

 1986年生まれの最果タヒは、数々の詩を発表するいっぽうで、近年は展覧会にも積極的に取り組んでいる。2018年に太田市美術館・図書館で行われたグループ展に参加し、昨年は横浜美術館で個展「氷になる直前の、氷点下の水は、蝶になる直前の、さなぎの中は、詩になる直前の、横浜美術館は。― ― 最果タヒ 詩の展示」を開催し、3万人以上が来場するなど話題を集めた。

 本展では、横浜美術館の個展で発表されたインスタレーションをはじめ、新作の“詩の展示”を公開。デザインは、これまで最果タヒの書籍の装幀など、様々な企画でタッグを組んできた佐々木俊が担当する。

会期:2020年12月4日~12月20日
会場:PARCO MUSEUM TOKYO
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷パルコ 4階
開館時間:11:00~21:00 
休館日:無休 
料金:一般 800円 / ミニ本付チケット 1800円

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