1950年8月26日に劇場公開された、黒澤明監督の映画『羅生門』。当時国内で大ヒットとはならなかったものの、黒澤の芸術的な野心が認められ、51年にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を、52年にはアカデミー賞名誉賞を受賞。国際的な評価を確立し、戦後復興のひとつの象徴にもなった。
そんな『羅生門』の公開70周年を記念する展覧会が、東京・京橋の国立映画アーカイブで開催される。会期は9月12日~12月6日。
黒澤の卓越した演出力だけでなく、それまでの日本映画のつくり方を革新した数々のスタッフワークに支えられた 『羅生門』。本展では企画から撮影、公開、世界展開にいたるまで様々なエピソードを再検証するとともに、デジタル技術を使った新たな資料展示の可能性に取り組む。
展示では、それぞれ食い違う登場人物の証言が真実を覆い隠す橋本忍の脚本術、ロケーションを活かし、あえて太陽にカメラを向けた宮川一夫の斬新な撮影、巨大な羅生門をオープンセットとして造形した松山崇ら美術スタッフの功績、そして日本の中世の物語にボレロ調の旋律を大胆に組み込んだ早坂文雄の音楽などを、各種の資料によって解剖。
また、同作を成功に導いた三船敏郎、京マチ子、森雅之、志村喬といった名優にも注目するほか、金獅子賞受賞前の『羅生門』を伝えるポスターなどの資料、ヴェネチア映画祭出品の経緯や、アメリカを中心とした受賞後の反響と影響についても多角的に紹介する。
会期中には、関連企画「生誕100 年 映画俳優 三船敏郎」も開催(10月2日~22日)。『羅生門』をはじめ戦後日本映画を代表するスターとして、また監督・プロデューサーとしても活動したその軌跡を回顧する。