新型コロナウイルスから放射線、死刑囚まで。「見えないもの」をテーマにした「かんじんなことは、目に見えない」開催

にしぴりかの美術館(宮城県)で、「見えないもの」をテーマにした企画展「かんじんなことは、目に見えない」が開催される。企画は櫛野展正(クシノテラス)。

Chim↑Pom REAL TIMES 2011 ヴィデオ(11分11秒) Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 新型コロナウイルスの脅威が世界を覆うなか、「見えないもの」をテーマにした企画展「かんじんなことは、目に見えない」が宮城県黒川郡の、にしぴりかの美術館で開催される。企画は櫛野展正(クシノテラス)。

 本展に参加するのは、それぞれ独自の方法で「見えないもの」を可視化させ、その時代の空気を記録することを試みた(ている)7組だ。

 フォトジャーナリストのスティーブン・ハーシュ(1948〜)は、パンデミックやそれによって変化した生活を描写した絵を連日独学で描き続けている。

スティーブン・ハーシュ First Responders

 オウム真理教元幹部で2018年に死刑が執行された宮前一明(1960〜2018)は、08年の死刑確定後より、筆ペンで山河や鳥を描き始め、毎年「死刑囚表現展」に応募するなど多彩な表現を披露していた。

宮前一明 思惟の慟哭

 6歳でハンセン病を発症し、17歳から99歳で逝去するまで熊本の「国立療養所 菊池恵楓園」で人生を過ごした木下今朝義 (1914〜2014)は、53年に施設内で発足した絵画クラブ 「金陽会」で、60歳を過ぎてから絵を描き始めた。

木下今朝義 裸婦 一般社団法人金陽会

 2011年、福島第一原子力発電所事故から1ヶ月後に原発付近の東京電力敷地内で作品制作をしたChim↑Pomは、本展で《REAL TIMES》を上映する。

 新型コロナウイルスといった物理的に「見えないもの」だけでなく、制度や構造として「見えないもの」まで、想像力を巡らせることが重要だと櫛野は指摘する。「そうした想像力は、困難な状況においても、なお分断を乗り越え、人々をつなぎとめるための想像力にほかならず、現在そして将来起こりうるべき脅威に対し、対抗する力になり得るかも知れません」。

「見えないもの」は漠然とした不安をもたらし、人々のあいだに差別や分断を生んできた歴史がある。コロナ禍の現代だからこそ、こうした企画展を通じて「見えないもの」への眼差しを意識したい。

編集部

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