科学者であり美術家として活動する脇田玲(わきた・あきら)の個展「PHOTONS」が、山梨県北杜市の清春芸術村内・光の美術館で開催される。会期は11月9日~2月2日。
日産の電気自動車リーフと映像が一体化した作品《NEW SYNERGETICS –NISSAN LEAF X AKIRA WAKITA》(2017)をはじめ、科学と美術を横断するような映像表現を行っている脇田。
2016年には音楽家・小室哲哉とのオーディオ・ビジュアル・プロジェクトを開始し、同年、オーストリア・リンツで開催された先端芸術の祭典「アルス・エレクトロニカ」でインスタレーション《Scalar Fields》を8K展示、話題を集めた。
今回、会場となる光の美術館は、安藤忠雄の設計による自然光のみの美術館。一切の人口照明がない展示室では、四季や天気、太陽の動きによって刻々と変化する光のなかに身を置くことができる。
本展で脇田は、自然光のみの空間にあふれる光子(光の粒子)の存在にフォーカス。光子をモチーフとした平面作品および映像作品が展開される。開催にあたって、脇田は次のようにコメントしている。
安藤忠雄の設計した光の美術館の中で、その空間にあふれる光子の存在に意識的になることで、空間が空間でなくなり、光が光でなくなるような体験を提供したいと考えました。ところで、量子力学の世界観と、仏教的な世界観は高い親和性を見せることが近年指摘されています。チベット・インド仏教の高レベルな瞑想者は、その修行の末に光子を見ることができると言われています。禅や仏教の修行の目的の一つは量子論的世界を感得することなのかもしれません。そうだとすれば、物理学の営みと、仏教の営みは、正反対のアプローチから、同じ目的に向かって進んでいるのかもしれません。もし、仏教的な営みから量子論的世界の本質に至れるのであれば、その反対のアプローチ、つまり物理学的な営みから禅的な本質に至ることができないかと考えました。光子の振る舞いをモチーフにした作品を鑑賞することを、禅的な悟りに至るための第一歩として位置づけても良いのではないかと考えたのです。