36歳という若さで世を去った画家・松本竣介(1912~48)。中学時代に聴力を失い、やがて絵画を志した松本は17歳のときに上京。戦中戦後の困難な時代のなかでも明確な意志を貫き、死の間際まで精力的に活動を行った。
そんな松本が編集した『雜記帳』は、自由な文章形式である随筆、エッセイを中心に、時代に文化の総合を求めた知性を提供する雑誌を目指し、36年に刊行された。特集記事にはヒューマニズムなどをテーマに掲げるなど、人間性に全幅の信頼と価値を置いた雑誌でもあり、その姿勢や態度は、編集者であった松本の真摯な生き方そのもののように感じ取れる。
その『雜記帳』に作品を寄せた作家たちを紹介する展覧会「松本竣介と『雜記帳』」が、東京・駒込のときの忘れもので開催されている。出品作家は松本のほか、福沢一郎、難波田龍起、桂ゆき、恩地孝四郎、鶴岡政男、海老原喜之助が名を連ねる。
また本展に際し、カタログ(カラー、44ページ)も刊行される。同著のテキストは、美術評論家の小松崎拓男が担当した。