独特な雰囲気をまとった人物の姿に、見覚えはないだろうか。これを手がけたのは、三島由紀夫や唐十郎、四谷シモン、コシノジュンコらとともに、時代の寵児としてアバンギャルド芸術の最前線をリードした画家・金子國義だ。その回顧展が、弥栄画廊 銀座店で開催される。
金子は1936年生まれ、59年日本大学芸術学部卒業。デザイン会社への勤務を経て、64年から独学で油絵を描き始める。この頃から澁澤龍彦と交流し、翌年には澁澤が翻訳を務めた『O嬢の物語』の挿絵を担当。以降百貨店の美術画廊などで個展を開催するほか、作品集や版画集を多数刊行した。
74年にはイタリア・オベッティ社の依頼で絵本『不思議の国のアリス』を発刊。以降ジョルジュ・バタイユの『眼球譚』や『マダム・エドワルダ』を題材とした作品で独特なエロティシズムの世界を確立し、一斉を風靡する。2015年の逝去後もその魅力は衰えることなく、近年は海外文学との関連から再評価の機運が高まっている。
本展では、初期作品のなかでも特に稀少な油彩画約10点を紹介。いまもなお多くの人を惹きつけてやまない耽美な作風の原点を垣間見ることができるだろう。