日本を代表する染色家、柚木沙弥郎(ゆのき・さみろう)。その個展「柚木沙弥郎の『鳥獣戯画』」が、神奈川県立近代美術館 葉山で開催される。
柚木は1922年生まれ。42年、美術史を学ぶため東京帝国大学(現・東京大学)に入学するも、第二次世界大戦のため勉学の中断を余儀なくされる。そして終戦後、柳宗悦が提唱した「民藝」に出会い、のちに人間国宝となる染色家・芹沢銈介に師事。以降70年あまり、創作活動を続けてきた。
染色にとどまらず絵本や版画、彫刻へと表現の幅を広げてきた柚木。「用の美」の精神を引き継ぎながら、日々の「もの」との出会いを色彩豊かに表現した作品群は、国内外で高く評価されてきた。
近年では「La Dance des formes 柚木沙弥郎のテキスタイル作品」(フランス国立ギメ東洋美術館、2014)、「柚木沙弥郎の染色 もようと色彩」(日本民藝館、2018)など国内外で回顧展を開催。同館の鎌倉別館でも、2012年に「柚木沙弥郎展 村山亜土作『夜の絵』とともに」が行われた。
本展では同館のコレクションを中心に、「鳥獣戯画」をモチーフとした新作をはじめ、初公開となる型染布《歓喜のうた》《いのちの樹》を紹介する。また、宮沢賢治『雨ニモマケズ』や村山亜土のテキストに寄せた絵本原画も展示。96歳を迎えてもなお精力的に活動する作家の「今」を伝える内容となっている。