超高層ビルへの建て替えを目前に控えた東京・京橋の戸田建設本社ビルを舞台に、「建築」と「現代美術」の2つの展覧会を通じて2021年以降を考えるアートイベントが開催される。企画は、アーティストの藤元明と建築家の永山祐子。
8月からの建築展は、建築家の中山英之と藤村龍至が手がける。現在、東京藝術大学の建築科で教鞭をとる2人は、教育者の視点から「島京2021(TOKYO2021)」と題された課題を作成し、「考える現場」としての展覧会を提案。参加者は若手建築家とともに1ヶ月のあいだ制作と議論を続け、様々なゲストを迎えて討論を行うほか、来場者と東京の未来像を思考することを目指す。
「島京」とは、複数のエリア再開発が同時多発的に進行する東京を、島の集合体としてとらえる言葉。課題文では「島京」化をもたらしたものは何なのかを可能な限り明らかにしたうえで、参加者とともに2021年以後の東京の都市状況を考える。
いっぽう9月から行なわれるのは、美術展「慰霊のエンジニアリング」。キュレーションは美術家・黒瀬陽平が、会場構成は建築家・西澤徹夫が務める。
本展は、来るべき2つの「祝祭」(2020年の東京オリンピックと25年の大阪万博)に向けて企画されるもの。黒瀬は、祝祭と祝祭の間に必ず大規模な「災害」が起こっていることに注目。反復される祝祭と災害のなかで新たな想像力や表現を生み出す芸術の営みを「慰霊のエンジニアリング」と名付け、その系譜をたどる。
起点となるのは、近代日本の国土づくりの根幹であった「近代土木」の思想が失効し始めた1970年代。本展では、それ以降のアーティストたちがいかにゲームやインターネットの文化を取り入れ、「慰霊」への想像力とテクノロジーによって古今東西の災害の記憶をバーチャル化し、「投企」してきたのかを明らかにする。
具体的なゲストや参加作家は明らかにされていない「TOKYO2021」。大規模開発の前夜を舞台に日本の都市史・美術史が解体されることで、どのようなヴィジョンが提示されるのかを見届けたい。