2023年に予定された郊外から都市部への移転を控え、改めて「芸術であること」「大学であること」「地域にあること」の意味を再考している京都市立芸術大学。それはアートの視点から大学や地域をとらえる作業であると同時に、大学や地域の視点から「独りよがりなアート」をとらえ直す作業でもある。
同大学は2016年より、こういった問題意識から様々な物事を多方向からとらえ、その視差から世界を多元化する状況の発信に携わるアートマネジメント人材の育成を目指すプログラム「状況のアーキテクチャー」をスタート。3年間にわたって「物質:大学所有アーカイブの創造的な活用法を探る」「生命:ケア×アートで新たな生存の技法を探る」「社会:地域コミュニティのコアを担い得る芸術大学の活用方法を探る」という3つのテーマを掲げて活動を行ってきた。
芸術・大学・地域をつなぐアートの可能性を検討するための多様な同プログラム。身体や集団を通じてあらゆる知と技術を結びつけることと、社会のリアルな現場に巻き込まれながら渦をつくることの2つを交差させ、クリティカルかつ創造的なビジョンを発信するための実験的な試みだ。
そして今回、その3年間の活動を集約した展覧会が、同大学が運営するギャラリー「@KCUA」で開催される。建築家の大西麻貴をゲストに迎える本展では、大学移転へ向けた「仮設避難所」がギャラリー内に出現。視覚情報のみならず聴覚やあらゆる身体感覚に作用するような空間によって、「物質」「生命」「社会」を巡る様々なファクターを結びつけ、多角的な思考を促す「多感覚的な鑑賞と参加の場」となることを狙う。