近世日本を代表する絵師として知られる長澤蘆雪(1754~1799)。「円山派」の祖として日本画壇に大きな影響を及ぼした絵師・円山応挙の弟子のひとりとして知られてきたが、ここ数十年で蘆雪は応挙と同世代の伊藤若冲や曽我蕭白とともに「奇想の画家」として位置づけられ、高い評価を得ている。
その画風は、黒白/大小の極端な対比や、写実を無視した構図など、師である応挙の作風から逸脱するもの。描かれるものは基本的に明るく軽快な印象であるが、晩年は《山姥》のようなグロテスクかつ陰惨な印象の作品を残すようになった。
現在、スイス・チューリッヒのリートベルク美術館で開催されている「長澤蘆雪―18世紀日本のアバンギャルド」展は、「近世の禅思想は蘆雪の芸術に対してどのような影響を与えたか」「蘆雪はなぜ特に動物・子供・禅機といった画題にこだわったか」「蘆雪はパトロンとどのような関係を持ったか」「蘆雪が活躍していた地方の特殊性がどのように作品に反映されているか」「蘆雪の誇張した表現への傾向にはどのような原因があったか」という5つのテーマをもとに、重要文化財を含む54点の作品を紹介。
会場の中央では、約35枚の障壁画が本展オリジナルの位置関係で展示され、それぞれの画面がどのように作用しあうのか、作品どうしの新たな関係性が示される。蘆雪の画業を通覧できる本展に、スイスの人々はどのような反応を示すだろうか。