2018.7.21

遠藤水城がキュレーションする
今年の「Identity」展。
展覧会空間に現る「水平線」は
鑑賞者にどう作用するのか

東京・京橋のnca | nichido contemporary artで「Identity XIV curated by Mizuki Endo – 水平線効果 – 」が開催されている。今年のゲストキュレーターは遠藤水城。会期は8月4日まで。

内田百合香 山 2017
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 「Identity」は、2008年より続くシリーズ企画。今年は遠藤水城をゲストキュレーターに迎え、「Identity XIV curated by Mizuki Endo – 水平線効果 – 」として、アートを通じて、人間存在の意味を探求することを試みる。

 遠藤は1975年札幌生まれのインディペンデント・キュレーター。過去にシンガポール・ビエンナーレ(2006)、ヨコハマ国際映像祭(2009)など国際的な展覧会のキュレーションを担当したほか、11年からは「東山アーティスツ・プレイスメント」「国東半島アートプロジェクトレジデンス」などの作家支援も精力的に行っている。

 17年よりヴェトナム・ハノイのVincom Center for Contemporary Art (VCCA)の芸術監督に就任し、現在に至る。主な受賞歴に、若手キュレーターに贈られる国際賞「Lorenzo Bonaldi Art Prize」(2005)がある。

 「水平線効果」というサブタイトルが与えられた本展は、平面作品のみで展開される。出品作家は、nca | nichido contemporary artの歴史と関わりのある草光信成、ヴィック・ムニーズ、パブロ・ピカソのほか、運動体「春のカド」(内田百合香、小山維子、竹下昇平、村松佑樹、山崎由紀子)、中屋敷智生。

中屋敷智生 呼吸することを意識してみる -Breath of Clarity- Photo by Takateru Kusaki

 本展を開催するにあたって、遠藤は以下のようなステートメントを寄せている。

 「草光、ピカソ、ムニーズはいずれもそういった作品たちは、展示されるべきものとしてあらかじめ用意されている。そこに春のカドという運動体と、中屋敷智生という特異な画家が、自身の作品を携えてやって来る。設営が始まる。構成が必要となる。絵画を壁にかけるという、ただその一つの実践に、歴史も、政治も、美学も、イデオロギーも、批評も、反省も、つぶやきも、思いやりも、不信も、理想も、現実も、全てが動員されていく。だが、この渦の中でも凪いでいる、静止した一つのラインがある。それを基準線としよう。その線の先に何があるかはわからない。それこそが水平線であり、私たちのなけなしの努力とその線はいつも同時に現れる。」

 展覧会空間に現れる「水平線」は、いかにして見る者にアイデンティティを実感させるのか。その内容に期待したい。