「Identity」は、2008年より続くシリーズ企画。今年は遠藤水城をゲストキュレーターに迎え、「Identity XIV curated by Mizuki Endo – 水平線効果 – 」として、アートを通じて、人間存在の意味を探求することを試みる。
遠藤は1975年札幌生まれのインディペンデント・キュレーター。過去にシンガポール・ビエンナーレ(2006)、ヨコハマ国際映像祭(2009)など国際的な展覧会のキュレーションを担当したほか、11年からは「東山アーティスツ・プレイスメント」「国東半島アートプロジェクトレジデンス」などの作家支援も精力的に行っている。
17年よりヴェトナム・ハノイのVincom Center for Contemporary Art (VCCA)の芸術監督に就任し、現在に至る。主な受賞歴に、若手キュレーターに贈られる国際賞「Lorenzo Bonaldi Art Prize」(2005)がある。
「水平線効果」というサブタイトルが与えられた本展は、平面作品のみで展開される。出品作家は、nca | nichido contemporary artの歴史と関わりのある草光信成、ヴィック・ムニーズ、パブロ・ピカソのほか、運動体「春のカド」(内田百合香、小山維子、竹下昇平、村松佑樹、山崎由紀子)、中屋敷智生。
本展を開催するにあたって、遠藤は以下のようなステートメントを寄せている。
「草光、ピカソ、ムニーズはいずれもそういった作品たちは、展示されるべきものとしてあらかじめ用意されている。そこに春のカドという運動体と、中屋敷智生という特異な画家が、自身の作品を携えてやって来る。設営が始まる。構成が必要となる。絵画を壁にかけるという、ただその一つの実践に、歴史も、政治も、美学も、イデオロギーも、批評も、反省も、つぶやきも、思いやりも、不信も、理想も、現実も、全てが動員されていく。だが、この渦の中でも凪いでいる、静止した一つのラインがある。それを基準線としよう。その線の先に何があるかはわからない。それこそが水平線であり、私たちのなけなしの努力とその線はいつも同時に現れる。」
展覧会空間に現れる「水平線」は、いかにして見る者にアイデンティティを実感させるのか。その内容に期待したい。