Chim↑Pomが提示する
「ボーダー」と「その向こう側」

東京・清澄白河の無人島プロダクションでは、2月18日よりChim↑Pom展「The other side」が開催される。本展では「ボーダー」をテーマに、2016年から17年にかけてメキシコ・ティファナとアメリカ・サンディエゴの国境沿いで制作したアートプロジェクトを発表する。

Chim↑Pom U.S.A. Visitor Center 2016Photo: Osamu Matsuda© Chim↑Pom Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production

 Chim↑Pomは、2014年からアメリカ合衆国の国境問題をテーマとした作品を制作。今回の新作を含むこれらの連作プロジェクトは、Chim↑Pom のメンバーの一人である、エリイが抱えるアメリカへの入国規制という個人的な問題をきっかけとして、古今東西さまざまな場で引かれてきたボーダーに着目し制作したもの。

 

 また、15年にChim↑Pomイニシアティブのもとでスタートした、東京電力福島第一原発の事故によってできた帰還困難区域内での国際展「Donʼt Follow the Wind」(帰還困難区域で開催中。封鎖解除後、一般公開予定)も、世界中のさまざまな「立ち入れない場所」を意識するきっかけとなったという。

 本展では、エリイがグループ展への参加に際し、ヨーゼフ・ボイスのパフォーマンス《コヨーテ-私はアメリカが好き、アメリカも私が好き》を引用したインスタレーション作品《COYOTE》(2014)に続くものとして、「立ち入れないアメリカ」のメタファーとして、「U.S.A. Visitor Center」と題したツリーハウスを建設した《U.S.A. Visitor Center》(2016)、メキシコ側の国境沿いに掘った実際の穴《The Grounds》(2017)、そして《The Grounds》と対になるように、FRPで制作した穴と十字架、スコップをアメリカ側に設置した《LIBERTAD》(2017)の3作品を紹介。

 

 いずれもメキシコ・ティファナでの3つの現地制作作品となり、奇しくも国境壁建設など、強行的な政策を押し進めるドナルド・トランプ大統領誕生に呼応するような作品は、現地メディアでも取り上げられ、国際的に注目を集めている。

 本展タイトルの「The other side〈向こう側〉」は、リベルタ(スペイン語で「自由」の意味。ティファナの国境沿いの地域の呼称)の人々がアメリカのことを指す際の言葉に由来しており、ティファナでのプロジェクトは、自由を信じてきたアメリカ人や国境に挑み続けるメキシコ人たちへ向けたものであると同時に、シリアの難民、福島から避難した人たち、世界中の不法移民や政策による移民受け入れ規制など現代社会のあらゆる「ボーダー」に人生を左右されている人たちへも、同じく向けられているという。

編集部

Exhibition Ranking