フランスの画家、モーリス・ド・ヴラマンク(1876〜1958)は、独学で絵を学び、20世紀初頭にアンリ・マティスやアンドレ・ドランらとともに、「フォーヴィスム(野獣派)」で一世を風靡。その後、セザンヌに傾倒し、形態のボリュームを強調した構成力のある作品を描いた。第一次世界大戦後はパリ郊外にて、厚塗りの情感溢れる大きな筆致で対象を描き出し、次いでパリから100km以上離れた小村リュエイユ=ラ=ガドリエールに住まいを移し、抑制された色調や、スピード感あるタッチで田園風景や妻が活けた花束などを描き続けた。
そんなヴラマンクの、フォーヴィスム後の画業を辿る展覧会「ヴラマンク展 絵画と言葉で紡ぐ人生」が静岡市美術館で開催される。フォーヴィスムから距離を置きはじめた、1907年頃の作品から最晩年までの作品76点で、その独自の画風の形成の様子をたどるという内容。また、日本ではまとまって紹介される機会の少ない、フランスやスイスの個人所蔵の作品も多数展示される。
いっぽうでヴラマンクは絵画以外にも、音楽や自転車競技など多方面で活動。なかでも文筆家としては生涯に20点以上もの著作を発表している。言葉による表現も、絵画と同様に自身を表すための重要な手段としていたというヴラマンク。本展では、文筆家としての一面にも着目する。
また、ヴラマンクが雑誌『ARTS』に発表した文章「私の遺言」を、作家自身が読み上げている音声がヴラマンクの写真とともに紹介される。。さらに、彼の著書および日本での翻訳書を紹介するコーナーも設置され、知られざる「文筆家ヴラマンク」としての姿を知ることができる。
静岡会場が巡回の最終会場となる本展。画家の新たな一面を見に足を運びたい。