1894年神奈川県橘樹郡高津村(現・川崎市)に生まれた濱田庄司は、1916年東京高等工業学校(現・東京工業大学)の窯業科を卒業後、京都市陶磁器試験場で当時の陶芸業界の先端技術を学び、釉薬などを研究。イギリス人陶芸家、バーナード・リーチに誘われ、20年にイギリス西南端のセント・アイヴスで作陶を始める。
滞在中に訪れたロンドン南方の芸術家村・ディッチリングで、染織家のエセル・メーレや詩人で彫刻家のエリック・ギルなどと交流した濱田は、都会から離れた美しい村での生活と結びついた創作態度を目のあたりにし、大きな影響を受ける。そして帰国後は、沖縄の陶工たちの昔ながらの仕事を学ぶいっぽうで、制作の拠点としては江戸後期の窯場の仕事が残る栃木県の益子を選択した。
濱田は、各地の伝統的な民窯の器などを通して、作為的な美とは異なる、生活の中から自然に生みだされる美を見出していった。そして、生活に根ざした暮らしをしながら、益子の土と釉薬を使って器づくりを行い、陶芸の世界に新たな境地を開拓した。
本展では、濱田の作品を蒐集し、日々の暮らしでその器を使用していたという堀尾幹雄のコレクションを紹介。柳宗悦も高く評価していた茶碗も多数含まれるというこのコレクションから184件と、京都・イギリス時代の資料、濱田自身が蒐集した世界各地の民窯の器などを合わせた約200件を通して、暮らしに息づく器の魅力を探る。