「ダンス」の歴史的背景と熱量がテーマ。記憶の反復、循環、共鳴を映し出す松原健が個展を開催

「記憶」をテーマに映像や写真作品を中心に制作している松原健の個展「Spring Steps」が、東京・代官山のLOKO GALLERYで開催される。会期は2018年5月18日〜6月13日。本展では「ダンス」をモチーフに、その歴史的背景と熱量を映し出す。

松原健 「Spring Steps」キービジュアル 2018

 1949年東京生まれの松原健は、80年代から映像や写真を用いた作品を精力的に発表。様々なオブジェクトやインスタレーションを伴って多角的に展開する作品群を提示し、日本のみならず欧米やアジアなど、世界中で活動を行っている。

 近年の制作のなかで、一貫して「記憶」をひとつのテーマとして抱き続けているという松原。その作品に用いられる古いファウンド・フォトやオブジェは、それ自身がもつ重厚な歴史的背景やノスタルジックな気配を感じさせながら、いっぽうで松原のシンプルで清新な作品構造のなかで匿名性を与えられることで、鑑賞者の記憶と共鳴し、新しい作品像が浮かび上がらせる。

松原健 「Spring Steps」キービジュアル 2018

 松原の作品は記憶の反復や循環、共鳴といった諸作用によってかたちづくられていく。セーレン・キェルケゴールの言葉、「反復と追憶は同一の運動である」「追憶されるものはかつてあったものであり、それが後方に向って反復されるのに対し、ほんとうの反復は前方に向って追憶される」を引きながら、松原は自身の作品について語っている。

 そして2018年5月18日からLOKO GALLERYで開催される松原の最新個展「Spring Steps」では、自身のキャリアにおいて初となる「ダンス」をモチーフにした作品群が映像とインスタレーションを軸に展開される。

松原健 「Spring Steps」キービジュアル 2018

 戦後日本の復興期における文化的シンボルのひとつともいえる「ダンス」。ダンスホールや社交ダンスは、当時の若者の憧れであった欧米的な洒脱さの象徴であると同時に、アジアの近代化や植民地支配といった問題と背中合わせになった存在でもあった。そのような複雑な背景を顧みながら、かつて「ダンス」という文化が持っていたダイナミックな熱量を、松原は自らの作品の中に映し出して「追憶」することで、未来への道筋を提示するという。その展示手法にも注目したい。

編集部

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