エイヤル・セーガルはドイツとインドにルーツを持つユダヤ人として1982年イスラエル生まれ。「場所」をキーワードに、特定の場所にまつわる記憶や歴史、人の営みを叙事詩的に描く作品を制作。独立した複数の映像作品を、展示会場で相互に影響を与えあう、サイトスペシフィックなインスタレーションとして昇華させ、発表している。
本展タイトルの「GROUND LEVEL」とは量子力学における基底状態、すなわち原子や分子のエネルギーがもっとも少なく、動きも少ない状態を示す。いっぽうで、本展に選ばれた作品群には、垂直や水平、回転といった物理的変位、そして歴史の流れ、イメージの循環、生死の往来といった、様々な「動き」が含まれている。セーガルはそれらの作品によって、展示会場に様々なベクトルのエネルギーを配置し、絶妙なバランスをとらせることで「GROUND LEVEL」の形成を試みる。
さらに展示構成の最後のピースとなる作品として、東京でのレジデンス中に作品を制作する。生と死にまつわるユダヤと日本、2つの文化を象徴するする歴史上の物語をモチーフにした本作では、長い年月を経てもなお存在し続ける「痕跡」としての場所に焦点をあて、すでに失われた登場人物たちと、彼らに連なる現代の人々の姿をあらわにする。
なお、本展は第10回恵比寿映像祭「インヴィジブル」の地域連携プログラムとして、LOKO GALLERYが日本、イスラエルのアーティストの2つの個展をキュレーションする企画「Displace」の第2弾となっている。