1977年東京生まれの写真家・石川直樹。これまで極地の人力踏破や七大陸最高峰の登頂など、世界中の自然をフィールドに活動を続けてきた石川が、日本や南方の島々を巡って撮影した未発表作品を東京と大阪で発表する。
石川は東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了し、『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により、日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を、『CORONA』(青土社)により土門拳賞など受賞歴多数。最近では、ヒマラヤの8000メートル峰に焦点をあてた写真集シリーズ『Lhotse』『Qomolangma』『Manaslu』『Makalu』『K2』(SLANT)を5冊連続刊行するなど、精力的に活動を行っている。
20代前半から断続的に南島行きを繰り返してきたが、2016年末から住民票を宮古島に移し、島での生活を始めたという石川。その生活について下記のように語っている。
「それは、訪ねるたびに変わっていく島の風景を、自分の視界に入る限りにおいて写し留めたいという決意であり、十代の頃から移動を繰り返してきた末に四十歳にならんとする自分への小さな楔という意味合いもあった。さらに言えば、島に暮らす人々と、海を越えてやってくる自分の『見る/見られる』という関係をほんのわずかでも融かすことができないだろうか、というある種の“あがき”のようなものも含まれているかもしれない。
星を、ただ星として写し留めること。それが本当に可能なのかわからないのだが、思考の暗い陥穽に落ち込む前に、島に暮らす人々から発せられるわずかな光を少しでもフィルムで受け止めたい。そうした思いの涯てに、本展がある」
地政学や民俗学の視点から風景をとらえ直し、撮影を行ってきたという石川の写真展。東京ではギャラリートークとサイン会も実施されるので、合わせてチェックしたい。